ゴールドマンですら弱腰?黄昏のウォール街 リスクの高い取引を避け、給与も大幅カット
たとえばゴールドマン・サックス。最近の発表によると、貸借対照表の規模を示す負債と株主資本の合計額は2010年から6%、2007年から24%縮小した。従業員1人当たりの報酬は2010年から13%、2007年から43%低下している。「報酬水準も固定費も大幅に調整した」とゴールドマン・サックス・グループのロイド・C・ブランクファインCEOはフロリダ州で開催されたその会議で述べた。「わが社の財務概要は変貌した」。
ドッド・フランク法が定めた新規則
こういう重要な水準低下は往々にして見過ごされている。というのも金融各社は危機後にもっと抜本的な変革案をはね返し、最近も2010年のドッド・フランク法による規制改革の大きな流れを後退させた。しかも利益は高水準で推移している。JPモルガン・チェースは通年の利益が過去最高になった。
ただし利益増は給与や人員を減らすことも含めたコスト節減に助けられてのことだ。業界の健全性を示す最も基本的な指標、総収入の伸びは数十年ぶりに止まってしまった。会社によっては総収入が減り、経営陣はあらゆる業務部門について見直しを迫られている。
これらの変化はドッド・フランク法で定められた新規則や禁止事項に促された面もある。加えて、世界情勢をめぐる経済的な不確実性も金融機関の足かせとなってきた。もちろん景気回復がもっと確かな軌道に乗れば業務拡大に動くかもしれない。
だが金融各社の幹部たちも規制機関の関係者も異口同音に、業界を変貌させる主な原動力となってきたのは、連邦準備制度理事会(FRB)ほか規制機関が金融大手に対して資本を増強させる方向で努力してきたことだと指摘する。そこでは業界ロビーの反対攻勢もあまり効き目がなかった。
金融機関は資本に関する規則の下、ごく単純に言うと、融資や取引のためにリスクを取るときは必ずそのたびに資本という限りある財源をいくらか費やすことを義務付けられる。取引や融資のリスクが高ければ高いほど、より多くの資本を充当しなければならない。