その結果、2013年時点のアメリカでは、国民の名目の平均所得は1995年の水準に戻ってしまっていますが、実質の平均所得はさらに遡って1990年代前半の水準にまで落ち込んでしまっています。
国民の生活水準は「実質賃金」で考える
私から言わせればどう考えても、アメリカの経済政策は長期トレンドとして実質賃金が落ち始めた1990年代前半から失敗していたと言っても過言ではないでしょう。
国民の生活水準を考える時に、大事なのは「名目賃金」ではなく「実質賃金」です。このことを否定して、名目賃金のほうが大事であると言っている経済識者がいるとすれば、それは経済のことを語る以前に、物事の道理がまったくわかっていないと言えるでしょう。
それでは次に、厚生労働省の統計をもとに、「21世紀型インフレ」が始まった2000年以降の日本における名目賃金と実質賃金の推移を見てみましょう。
2000年1月の両方の賃金を100として指数化したグラフを見てみると、おそらく「インフレ万歳」と言っている識者たちが決して知らない事実がはっきりと浮かび上がってきます。
グラフを見ていただければ説明の必要はないかもしれませんが、日本における実質賃金はアメリカのそれとは異なり、アメリカの住宅バブル崩壊とリーマンショックの影響が色濃く出た時期までは、指数は100を起点にして多少上下するだけで、ほとんど下がっていなかったのです。
さらに注目すべきは、リーマンショック前後には指数は最大で4ポイント下がったわけですが、安倍政権誕生後の2年間では最大5ポイントも下がってしまっていたのです。
このうち2ポイントが消費税増税の影響であったとして、それを割り引いたとしても、アベノミクスの失敗理由を消費税増税のせいにすることは極めて難しいでしょう。
そもそも、物価上昇率に占める消費税増税分2%の根拠についても、私はかなり怪しいと考えています。というのも、この2%の根拠は、物価指数の算出対象となるモノやサービスのうち課税対象となるものが約7割に相当するので、単純に消費税引き上げ分3%×0.7という計算に基づいておよそ2%になるというものだからです。
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