「貧しいのは努力が足りないから」なのか? 所得格差解消のカギは「善意」にある

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フランスの経済学者トマ・ピケティ氏の著書『21世紀の資本』が大きな話題となっている。ピケティ氏は格差拡大を食い止めるためには、「資本へのグローバルな累進課税」が必要だと説く。ただ、ピケティ氏自身も認めているように実現へのハードルは非常に高そうだ。
では、どうすればいいのか。「たとえ税金をかけなくても、人々の意識が変われば格差は是正できる」。そう語るのは、米国の社会起業家ジョナ・ウィットキャンパー氏だ。
ウィットキャンパー氏は、世界70カ国以上、2000人以上のメンバーが参加する「ネクサス・グローバル・ユース・サミット」(以下、ネクサス)の共同創設者。著名投資家ジョージ・ソロスの息子やウォーレン・バフェットの息子など、富裕層の若者に対し、社会・政治・慈善活動をうながす活動を行っている。
これからの時代、格差縮小のカギを握るのは何か。ウィットキャンパー氏に話を聞いた。

――ネクサスは富裕層の若者に慈善活動をうながしています。慈善活動に着目した理由は何ですか。

私の考え方に大きな影響を及ぼしたのは、祖父であるウィル・ウィットキャンパーです。1940年代、まだ米国に人種差別の風潮が根強く残っていた頃、祖父は「コイノニア・パートナーズ」という農場の管理人を務めていました。

この農場は、黒人も白人も人種を問わず共同で生活をするキリスト教のコミュニティでした。白人至上主義団体のクー・クラックス・クラン(KKK)から威嚇攻撃や抗議を受けることもあったようです。しかし祖父は屈することなく活動を続け、マーティン・ルーサー・キング・ジュニアやジミー・カーター、エレノア・ルーズヴェルトなど、多くの人の考え方に影響を残しました。祖父は黒人・白人の間に橋を架けようとしました。

私は富の格差に橋を架けようとネクサスを立ち上げ、今に至っています。世界には、十分におカネがあると思うんです。問題は、どうやったらおカネを持たざる者に振り分けられるか、その道筋が見つかっていないということです。

博愛主義で格差は解決できる

――どうやって富の格差を解消しますか。

フィランソロピー、博愛主義によって、格差は解決できると思っています。米国では、お金持ちが寄付をすることで、格差の解消を目指してきた例がたくさんあります。

実業家のアンドリュー・カーネギーは、貧しい人々が本を買えない時代に、米国各地に寄付をして公立の図書館を作らせました。つまり教育的なリソースへのアクセスを人々に与えたということです。

またロックフェラー一族は3つの財団を運営しています。この一族は、貧困層に寄付をして終わりではなく、ビジネスの芽を見つけるのにも長けています。たとえば農業学者のノーマン・ボーローグらの研究グループに資金を提供したことで「緑の革命」が起こり、穀物の収穫量が飛躍的に増えました。私は富裕な家族に働きかけて、こうした慈善活動をさらに活発にしたいのです。

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