「貧しいのは努力が足りないから」なのか? 所得格差解消のカギは「善意」にある
――ネクサスは富裕層の若者に慈善活動をうながしています。慈善活動に着目した理由は何ですか。
私の考え方に大きな影響を及ぼしたのは、祖父であるウィル・ウィットキャンパーです。1940年代、まだ米国に人種差別の風潮が根強く残っていた頃、祖父は「コイノニア・パートナーズ」という農場の管理人を務めていました。
この農場は、黒人も白人も人種を問わず共同で生活をするキリスト教のコミュニティでした。白人至上主義団体のクー・クラックス・クラン(KKK)から威嚇攻撃や抗議を受けることもあったようです。しかし祖父は屈することなく活動を続け、マーティン・ルーサー・キング・ジュニアやジミー・カーター、エレノア・ルーズヴェルトなど、多くの人の考え方に影響を残しました。祖父は黒人・白人の間に橋を架けようとしました。
私は富の格差に橋を架けようとネクサスを立ち上げ、今に至っています。世界には、十分におカネがあると思うんです。問題は、どうやったらおカネを持たざる者に振り分けられるか、その道筋が見つかっていないということです。
博愛主義で格差は解決できる
――どうやって富の格差を解消しますか。
フィランソロピー、博愛主義によって、格差は解決できると思っています。米国では、お金持ちが寄付をすることで、格差の解消を目指してきた例がたくさんあります。
実業家のアンドリュー・カーネギーは、貧しい人々が本を買えない時代に、米国各地に寄付をして公立の図書館を作らせました。つまり教育的なリソースへのアクセスを人々に与えたということです。
またロックフェラー一族は3つの財団を運営しています。この一族は、貧困層に寄付をして終わりではなく、ビジネスの芽を見つけるのにも長けています。たとえば農業学者のノーマン・ボーローグらの研究グループに資金を提供したことで「緑の革命」が起こり、穀物の収穫量が飛躍的に増えました。私は富裕な家族に働きかけて、こうした慈善活動をさらに活発にしたいのです。
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