「お盆の渋滞」がコロナ前の約9割まで戻った理由 渋滞の発生回数は減るも最長46.2kmを記録

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NEXCO中日本の資料によると、渋滞の名所である東名高速道路 大和トンネル付近の平均断面交通量は、2019年も今年も1日当たり7万4000台とほぼ回復しているが、10km以上の渋滞回数は9回から5回に減っており、2021年に工事を終えた“一部付加車線の運用の前と後”であることを強調している。

とはいえ、まだまだ大和トンネル、あるいはその少し西にある綾瀬スマートIC付近の渋滞はお盆ではない通常の平日でも慢性的に発生している状態だ。今も付加車線の工事は続いているとはいえ、解消にはまだまだ時間がかかるだろう。

コロナ前より交通量が増えた区間も

公表された利用状況では区間ごとの数字も出されており、中にはコロナ以前の2019年以上に利用台数が増えている箇所もある。岐阜県の東海北陸道飛騨清見~白川郷IC間(2019年比117%)、滋賀県の新名神甲南~信楽IC間(106%)、和歌山県の阪和道みなべ~南紀田辺IC間(105%)の3区間だ。

一方、2019年との比較で6割を切っているのが、福井県の北陸道福井~鯖江IC間の57%である。北陸道の通行量が大きく減ったのは、お盆前に福井県で豪雨被害があり、集計期間内を通して、調査区間のすぐ西側にあたる今庄~敦賀ICで通行止めが続いていたためだろう。

北陸道の白山市付近
北陸道の白山市付近。8月19日時点では、下りは福井県内で通行止めが続いていた(筆者撮影)

同時に、東海北陸道の区間でコロナ前より増えている理由も、ここにあるといえる。北陸と東海地方との間を走る車が、北陸道から迂回してきたと考えられるからだ。

この公表データの最後には、2019年のお盆の交通量を100とした場合の「2020年お盆」「2021年お盆」「2021~2022年の年末年始」「2022年の大型連休(ゴールデンウィーク)」の数字も掲載されている。

それぞれ、2020年お盆=67%、2021年お盆=62%、2021~2022年の年末年始=92%、2022年の大型連休=77%、そして今夏の89%という数字だ。

通行量は、曜日の並びや天候、あるいは最近高止まりしているガソリンの価格などにも左右される。そのため、この数字だけで正確な分析はできないが、かつてないほどの感染者が出ている第7波のさなかでも、多くの人が日常を取り戻しつつあることが示された格好だ。

この冬の年末年始、変異が続く新型コロナウイルスの感染状況はどんな状況になっているだろうか。コロナは収まってほしいが、高速道路は渋滞の起きない交通量であってほしい。そんな勝手な願いが頭をかすめる夏の終わりである。
 

佐滝 剛弘 城西国際大学教授

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さたき よしひろ / Yoshihiro Sataki

1960年愛知県生まれ。東京大学教養学部教養学科(人文地理)卒業。NHK勤務を経て、高崎経済大学特任教授、京都光華女子大学教授を歴任し、現職。『旅する前の「世界遺産」』(文春新書)、『郵便局を訪ねて1万局』(光文社新書)、『日本のシルクロード――富岡製糸場と絹産業遺産群』(中公新書ラクレ)など。2019年7月に『観光公害』(祥伝社新書)を上梓。

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