まずは安全保障面である。昨年8月15日、米軍のアフガニスタンからの撤退作業中に、首都カブールがタリバンの手に落ちたことは、バイデン政権にとって消すことができない汚点となった。まるでベトナム戦争時の「サイゴン陥落」のような、いかにも「アメリカの没落」を印象づける事件であった。ゆえに8月下旬から、バイデン政権は不支持率が支持率を上回るようになる。
ところが今回、そのカブールに潜伏していたアイマン・ザワヒリを、米軍はドローンで殺害してしまった。オサマ・ビンラディン亡き後、アルカイーダの実質的な首領だった男である。「9月11日」の恨みを執念深く晴らしているわけだが、米軍はアフガン撤退後も現地での対テロリスト作戦を遂行できることが明らかになった。もちろんタリバンの野蛮な政治を止めたりはできないのだが、米軍の諜報活動や特殊作戦の能力は健在なようである。
経済面でも最悪期を脱した?
経済指標も注目すべき動きを示している。7月28日に公表されたアメリカ経済の第2四半期GDP速報値は、▲0.9%と2四半期連続のマイナス成長となり、いわゆる「テクニカル・リセッション」となった。
しかし個人消費や純輸出はプラスで、中身的にはそれほど悪くはない。そしてその後に公表された7月の雇用統計は、NFP(非農業部門の雇用者数)が前月比52.8万人増と強い伸びを示し、失業率は史上最低の3.5%にまで低下した。加えて7月CPI(消費者物価指数)は、前年比8.5%増の高水準だったが、ガソリン価格の低下などにより市場予測を下回るものとなった。
つまり景気は悪そうに見えるけど意外と底堅く、インフレもどうやらピークアウトしつつあるらしい。これらは政権にとってグッドニュースということになる。
そして立法面でも成果が上がっている。8月9日に成立した「半導体支援法」は、2800億ドルの資金を半導体産業と先端分野開発研究に投入するものだ。共和党議員も一部賛成しており、「中国との競争には負けないぞ」という昨今のワシントンの意識を反映している。しかし8月16日の「歳出・歳入法案」は、上下両院ともに民主党議員は全員賛成、共和党議員は全員反対という「パーティーライン」そのままで可決されている。バイデン政権としては「してやったり」であろう。
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