ここで、以上で見た政府見通しを離れて、原理的にありうる政策選択肢を考える。そして、具体的な姿がどうなるかを、を用いて、2020年と2040年の比較において計算してみよう。
給付調整型の場合には、先に示した人口構造変化の数字により、2040年における社会保障負担の原資は、労働力人口の減少に伴って、2018年の5978÷7516=0.795倍になる。
したがって、65歳以上の1人あたり受給額は、それを高齢者人口の増加率で割って、現在の0.795÷1.101=0.722倍になる。つまり、社会保障制度による給付やサービスが、約4分の1だけカットされるわけだ。
負担調整型の場合には、社会保障の給付は、高齢者人口の増加によって、現在の1.101倍になる。
これを現在の0.795倍の就業者で負担するのだから、1人あたり負担額は、1.101÷0.795=1.38倍になる。つまり、4割程度の負担引き上げになる
負担引き上げの具体的手当てが論議されていない
政府見通しの第3の問題は、負担率を上昇させるための具体的手段が示されていないことだ。
すでに見たように、政府が想定しているのは、負担調整型そのものだ。
しかし、その実現のための手段を示していない。
後期高齢者医療保険窓口負担を1割から2割に上げることを決めた以外には、具体的な制度改正が何も行われていない。
これは、賃金の伸びを高く見ているために、保険料率の引き上げが必要ないと考えられているからだろう。
ただし、それが望ましいかどうかの検討は必要だ。賃金が上がらずに負担が増えるのだから、生活水準は低下する。労働力率を高めれば問題は緩和されるが、問題は残る。
給付調整を考えたほうがいいかどうかも、議論されるのが望ましいだろう。
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