大抵の人が気づいてない社会保障の超深刻な問題 負担4割引き上げ必須なのに何も準備していない

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そこで、ゼロ成長経済を想定した場合に、1人当たりの給付や負担がどうなるかを見よう。

ここでは、計算を簡素化するため、「社会保障の受給者は65歳以上人口であり、費用を負担するのは15歳から64歳人口である」と単純化しよう。また、15歳から64歳人口のうち就業人口となる人の比率は、現在と変わらないものとする。

2018年から2040年までの人口の変化は、つぎのとおりだ(国立社会保障・人口問題研究所の中位推計)。

・15~64歳人口は、7516万人から5978万人へと0.795倍になる

・65歳以上人口は、3561万人から3921万人へと1.101倍になる

先に見たゼロ成長経済における社会保障給付の対GDP費の増加率10.7%は、いま示した65歳以上人口の増加率(10.1%)とほとんど同じだ。

驚くべき負担率の上昇

要するに、政府推計では、65歳以上人口の増加率と同じ率で社会保障費が増える(つまり、1人当たり給付は、ほぼ現在の水準を維持する)とされていることになる。そして、それを賄うために、負担を増加させるのだ。

上で見たように、負担は、全体で1.130倍~1.139倍になる。そして、負担者が0.795倍になる。

したがって、1人あたりの負担は、低くて42%増(1.130÷0.795=1.42)。高くて、43%増(1.139÷0.795=1.43)だ。

これは、驚くべき負担率の上昇だ。このような負担増が本当に実現できるだろうか?

どう考えても無理ではないだろうか?

給付は、全体で10.7~12.1%増加になる。そして、受給者が1.101倍になる。

したがって、1人当たりでは、低くて0.5%増(1.107/1.101=1.005)、高くて、1.8%増(1.121/1.101=1.018)だ。

このように、給付の切り下げはないと想定されている(むしろわずかだが、給付水準は上昇する)。

このように、政府の見通しは明確に負担増加型だ。つまり、1人当たり給付は、現在とほぼ同じレベルを維持し、それに必要な財源を調達すると考えられていることになる。

次ページ負担を一定にするには、給付を4分の1に削減する必要がある
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