毎月勤労統計調査によると、実質賃金指数(現金給与総額)は、2010年の106.8から2021年の100.0まで下落している。
こうした状況を考慮すると、2028年以降2.5%の賃金上昇率を想定するのは、楽観的すぎると考えざるをえない。
検討の基礎としては、ゼロ成長経済を考えるべきだろう。
では、ゼロ成長経済において、社会保障給付や負担はどうなるだろうか?
上記の推計においては、社会保障の給付と負担について、実額の他に、GDPに対する比率が示されている。「現状投影ケース」の場合は、つぎのとおりだ。
いま、ある時点における社会保障給付や負担、そして賃金のGDPに対する比率は、物価上昇率や賃金上昇率、あるいは経済成長率がどうであっても、影響を受けないと仮定しよう。つまり、これらの変数の成長率は同じであるとしよう。
その場合には、ゼロ成長経済における社会保障給付や負担の対GDP比は、上に示した値と同じはずだ。
したがって、上の数字から、ゼロ成長経済における社会保障の姿を知ることができる。
給付調整型も考える必要がある
政府見通しの第2の問題点は、代替的政策との比較がないことだ、
人口高齢化への対応策として、原理的には、次の2つのケースが考えられる。
第1は給付調整型だ。保険料率や税率を一定とし、給付を切り下げる。
第2は、負担調整型だ。現在の給付水準を維持し、それに必要なだけ負担を引き上げる。
では、政府見通しは、このどちらなのだろうか?
上で見たように、実額では、負担も給付も、どちらも約60%伸びる形になっているので、このいずれなのかを判別することができない。
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