負担率がわからない
社会保障給付の将来推計として、内閣官房・内閣府・財務省・厚生労働省が2018年5月に作成した資料がある(「2040年を見据えた社会保障の将来見通し」:以下「政府見通し」という)。これについては、「日本の政治家が社会保障の議論から逃げている訳」(2021年10月31日配信)で紹介した。
この資料は、社会保障の将来を考えるうえで貴重なものだ。しかし、いくつかの問題がある。
第1は、社会保障の負担率がどのようになるのかがはっきりしないことだ。
上記の見通しには、2018年度から2040年度までの社会保障給付や負担が示されている。
「現状投影ケース」では、2040年度の保障給付も社会保障負担も、2018年度の約1.6倍になる。
しかし、この数字からは、負担率などがどのように変化するかをつかむことができない。
仮に、高齢者の増加のために、社会保障給付が60%増えるとしよう。賃金が変わらず負担者数も変わらなければ、1人当たりの負担は60%増える。だから、保険料率などを引き上げる必要がある。
しかし、賃金が60%増加すれば、負担率は不変にとどめられる。保険料率は、現行のままでよい。
このように、経済成長率のいかんによって、社会保障制度の状況は、大きく変わるのである。
「日本に1%成長の実現が強く求められる切実な訳」(2022年8月7日配信)で述べたように、経済成長率が0.5%か1%かによって、数十年後の世界は、まるで違うものになるのだ。
上記の政府見通しでは、賃金について、かなり高い伸び率が想定されている。2028年度以降は、2.5%だ。
では、賃金をこのように上昇させることが可能だろうか?
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