賃金が上がらず、雇用も不安定で、将来の先行きも不透明となれば、下手な努力をするよりも最小の努力で最大の成果が得られる仕組みを考えたり、好都合なポジションを見つけ出したりすることに関心を向けたほうが合理的に思えるだろう。
生活コストを低くすればいつでも動ける自由を確保し、景気や物価などのダメージも抑えられるし、消費ではなくクリエイティブな趣味に打ち込むことで、ムダ遣いや過労といった負のスパイラルにつながりがたくなる……。
「自分の利益は、誰も守ってくれない。自分で守ろう」「自分の人生は自分で守る時代なのだ」は、『1%の努力』でひろゆきが強調したことだが、これは超格差化と自己責任化が進む社会変化を踏まえ、自己防衛モードへの切り替えが必要との認識がある。前述した①~③のアドバイスは、過酷な世界を生き抜くための「価値観の断捨離」と評すべきものといえる。
引き算型の自己啓発
ひろゆきはよく「意識低い系の自己啓発」などと言われたりしているが、最近市場が拡大してきている自己啓発のトレンドである「引き算型の自己啓発」に位置づけることができる。
かつての経済成長が生活水準の向上に結び付き、社会的な成功の階梯を上昇することや、大きな夢を実現することを後押ししていた「自己啓発1.0」が魅力を失い、報酬や身分といった階層化されたステータスなどよりも、個人的な幸福を高めていくことにこそ人生の価値があると捉え、日常生活を整えることをサポートする「自己啓発2.0」へのシフトが起こっているというのが筆者の見立てだ。
「自己啓発1.0」は、「稼ぐが勝ち」「秒速〇億稼ぐ」といった成功物語に支えられており、富や地位を得るためには努力や能力が必要だという「足し算」に意識が向けられている。がむしゃらに働くことはもちろん、強い信念やポジティブシンキングの重要性など、往年のビジネス書にお馴染みの体系である。
一方、「自己啓発2.0」は、成功がすべてだとは考えない。むしろ「勝ち組/負け組」で区別される比較のゲームから降りて、幸福な人生を送るのに不要だと思われる障害物を取り除く「引き算」に意識が向けられている。それは親や世間から植え付けられた価値観であったり、その価値観に引きずられて選んだ仕事や働き方、生活習慣、購入した商品等々ライフスタイル全般に及ぶ。
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