それはバスとしての運行目的が違うからだ。今回試乗した「MM」と「MS」は、ともに大型観光バスのカテゴリーに属しているが、「MM」が一般的な横方向4席(つまり片側2席)のシート配列であるのに対して、「MS」は夜行線仕様として仕立てられているため独立した横方向3席となっている。これが通常の大型観光バスと決定的に違う部分だ。
ちなみに夜行線仕様とは、高速道路を使いながら長距離を走りきる夜行バスに使われる特別仕様車のことで、国民的な娯楽TV番組である「水曜どうでしょう」でその勇姿をご覧になったことのある読者も多いと思うが、夜行線は日本経済を下支えする重要なパイプラインのひとつであり、今でも便によってはキャンセル待ちが出るほどの人気を誇る。
徹底的に作り込んだ乗客用シート
車内は写真のとおり横方向3席(席の両側が通路)の配列で、階下には立派な化粧室とドライバー用の仮眠室を備える。路線によっては15時間(距離にして約1100キロメートル)以上も座り続けることになるため夜行線仕様の乗客用シートは造り込みが素晴らしい。背もたれのリクライニング角は一般的なシートの2倍近く、試乗車である最新の「MS」が備えるシートの場合、伸ばした足を支えるオットマンも装備する。
加えて、シート間隔が広く、身長180センチメートル級の乗客であってもぐっすり眠ることができるのだ。こうした車内のゆとりは、たとえば東北・北陸新幹線が備える「グランクラス」にはかなわないものの、それでも電車にはない目的地までのドアtoドア感覚を実現してくれる夜行バスの魅力は大きい。
このように便利で快適であるのはお分かり頂けたと思うが、そもそも大型観光バスの燃費数値はどれほどなのだろうか? 乗客含めて15トン以上ともなれば、相応にパワフルなエンジンを搭載していなければならず、エコノミカルな一面だけ見ればその成り立ちに疑問符がついてもおかしくない。
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