食べられず処分される「オス牛」がいる日本の問題 ジャージー牛やブラウンスイスの悲しい現状

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「いわゆるおいしいと言われる霜降りの和牛は、ソースで食べる私たち洋食(イタリアンやフレンチ)の料理には、重たくて実は合いにくい。もっと赤身のおいしい牛肉を探していました。

牧草を食べ放牧肥育した牛を、4年近く育てた牛を、最後に穀物肥育をして仕上げてもらったブラウンスイスの牛肉。この牛肉は、赤身にうま味があり、脂のおいしさが目立つ和牛とは違う、うま味の濃い味わいに仕上がり、ヨーロッパの牛肉に似た味がする、新しい価値の肉です」(山根シェフ)

昔のお肉屋さんが行っていた日本古来の肉の熟成法“枯らし熟成”を施すこともよかった、とまさしくシェフに評価してもらえた肉ができたのです。これらの肉は、まだ少ないですが、山根シェフのお店でも扱っているとのことです。

「シェフと支える放牧牛肉生産体系確立事業」は、2019年に終了しましたが、その後も八丈島のゆーゆー牧場、八王子の磯沼ミルクファームなど、乳用牛のオス牛の肥育を引き続き手がけています。

この6月には、八丈島で肥育したジャージー牛を使い、山根シェフや「き田たけうどん」木田シェフのレトルトカレーをクラウドファンディングで発売しました。

肉の多様性が、日本のフードロスの削減となる

牛肉は、調理の仕方でほとんどの部位は料理や加工され、フードロスの少ない食材です。しかし、調理する前の段階で数字にはカウントされないフードロスがあります。規格に合わせ、流通(生産者と消費者の間に入る卸売り業者や小売店などがその担い手)の都合で、メジャーではないからと排除されてしまっている肉があるのです。

「こんなお肉もあるんだ!」とジャージー牛やブラウンスイスの肉も食べてほしいと思います。価値のないと言われているものの事実を知り、見方を変えることで、価値あるものになります。肉の選択肢が増えることで食は豊かになり、フードロスも削減できるのです。肉も多様性の時代です。

千葉 祐士 門崎熟成肉 格之進 代表

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ちば ますお / Masuo Chiba

1971年、岩手県一関市生まれ。1994年東北学院大学経済学部商学科卒業。1994年大倉工業入社、1999年より外食事業を展開し、五代格之進を開業。2004年丑舎格之進 川崎本店、2006年格之進TOKYO(練馬区桜台)開業。2008年10月に株式会社門崎を設立し、2010年格之進R(六本木)開業。2013年ミートレストラン格之進(一関)、焼肉のろし(岩手県陸前高田)、2014年肉屋格之進F(六本木アークヒルズサウスタワー)開業。2015年11月格之進Rt(代々木八幡)をオープン。現在は「門崎熟成肉」の牛肉販売、卸・食品加工、店舗運営、飲食店運営サポート事業、牛肉の啓蒙活動を行う。
 

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