食べられず処分される「オス牛」がいる日本の問題 ジャージー牛やブラウンスイスの悲しい現状

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乳牛種のオス肉の価値を認め、肉牛として肥育している生産者も実はいます。北海道十勝の「十勝清水コスモスファーム」は、通常であれば殺処分されてしまうオスのブラウンスイス牛を引き取り、生育して良質な牛肉として世の中に発信する活動をしています。

認知度が低いので一般のスーパーでは取り扱ってもらうことが難しく、主に飲食店やホテルに卸していました。が、2020年からのコロナ禍、店舗の営業自粛が続き、せっかくよい状態で仕上げたお肉は出荷先を失ってしまいました。生産者の安藤智孝さんは、「いまの在庫が終わり次第、この活動はやめるつもりである」とSNSで発信。

それを知った私は、食の多様性を拡散するためにも、在庫となっているブラウンスイスの牛肉を引き取り、2021年7月、ハンバーグとして販売をしました。「格之進」もコロナ禍で、店舗の売り上げは激減し大変な時期でしたが、自社の通販サイトでなんとか対応しました。

ブランスイスの肉を使ったハンバーグ
ブラウンスイスのオス牛の肉を利用したハンバーグ(写真:格之進真提供)

1頭5000円程度で売られるオス牛

ハンバーグは完売することはできましたが、結局安藤さんは、今残っている牛がいなくなり次第、ブラウンスイスのオス牛の肥育はやめるそうです(現在、オンラインショップにて精肉、加工品を販売中)。理由は、コロナだけではなく、子牛の販売価格にあるとのこと。

脱サラをして酪農を始めた安藤さんによると、「ブラウンスイスのオス牛が生まれても業者がなかなか買い取ってくれない。買ってもらえても1頭5000円ほど。メロンを付けてもオス牛はいらないと言われることもありました」と。

それが、ここ数年牛の性判別技術が進み、ホルスタインのオス牛が生まれなくなったため、ブラウンスイスの子牛1頭が5万円で取引されるようになったのです(ちなみに和牛の子牛も高騰していて、1頭70万〜100万円!)。高く売れることはいいのですが、ブラウンスイスの牛ということは消費者には伝わらず、スーパーなどでは“国産牛”として販売されているのです。

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