「これでは、ブラウンスイスのオス肉の現実、肉牛としてのおいしさ、価値が伝わらない。自分の社会的使命は終わったと思い、この事業は終わりにしました」と安藤さんは話します。
共にブラウンスイスの食肉用肥育の可能性を模索し、フードロスをなくす活動をしてきた仲間の事業撤退は残念です。だからこそ、乳牛種のオス牛について広く知ってもらい、日本の肉の「ダイバーシティ&インクルージョン(多様性の受け入れ)」が必要と痛感しました。
一流シェフが太鼓判「オス牛」の可能性
もう1つ5年ほど前から行っている活動があります。食に関わる経営者、料理人、研究者などが、日本の食、食文化を守り、普及させることを目的とした学会が「全日本・食学会」で、私も会員の1人です。2016年からアニマルウェルフェアの観点からも、新しい生産体系を作るために「シェフと支える放牧牛肉生産体系確立事業」で、ジャージー牛、ブラウンスイスのオス牛を肥育しています。
牛肉の流通規格であるA5、A4などは、食味を評価しているものではなく、肉の見た目や扱いやすさの指標。“シェフ牛“の企画は、このような規格ではなく、日々食材を扱い、食材を見極めているシェフに評価してもらえる牛肉を目指し、牛肉のさらなる選択肢となる肉を目指すものです。
全日本食学会の理事の1人で、大阪の有名イタリアン「ポンテベッキオ」の山根大助シェフは、「牛肉というと、黒毛和牛の霜降り肉ばかりがもてはやされ、画一的になっていて、それでいいのだろうか?」と思っていたと、このプロジェクトに参加。山根シェフは、世の中は多様性が叫ばれているのに、肉の価値は規格化されてしまって、霜降り肉はよい肉、高級!という価値の思い込みをリセットする必要がある、という思いを持つシェフです。
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