「若手もバリバリ活躍できる会社」という欺瞞 甘い「まゆつばコピー」に騙されてはいけない

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その一方で、大多数の普通の人たちは、長期間務めてもメリットが少ないため、仕事が合わないとわかると早期退職しがちです。結果、けっこうな大手企業なのに、この手の企業は離職率が高くなります。大手なのに、離職率が年率7〜8%以上で、なおかつ人気がそこそこある企業は、このタイプ②に当たると考えてよいでしょう。

タイプ③ 誰がやってもそこそこできる仕事

3つ目は、個人の能力も経験も、それほど多くは求められない仕事です。こちらは、1〜2年経験を積めば、誰でもある程度は業績が上がり、しかもトップの人と普通の人とで、業績の差は2倍程度しかつきません。ストレスも少ないし時間の融通も利くというメリットがある一方で、給料はそこそこで、やりがいもさほど期待できません。

会社の技術力やブランド力が高く、いい製品を作っているため、誰でも同じように売れてしまうという会社が、このタイプ③に当たります。たとえば、自動車やOA機器、家電製品、携帯電話などの販売を行っている会社、俗に言う「販社」(親メーカーのグループ傘下にある子会社のこと)がこのタイプに分類されます。

製品自体の品質が高いため、カタログやパンフレットの内容さえ理解できれば、誰でもそれなりに売ることができる。だから、あまり差がつかないのです。ただ、誰がやっても結果はそこそこなので、タイプ①のベテラン陣や、タイプ②の勝ち組のような、華々しい成果を残す人は多くありません。そのため、学生からの人気が高くなく、応募者が少ないのです。

しかも、経験が業績と直結しないため、長く勤続すると仕事がつまらなくなっていくので、離職率が高くなる傾向があります。そして、華々しいスターがいないため、若者の応募も少なくつねに人材不足に悩んでいるのが、このタイプの仕事を主にしている会社の特徴です。人材不足が常態化しているため、会社としては社員には、できれば長く勤めてほしいと考えがちです。そこで、給料は年功的に徐々に上がり、辞めないほうが得になるように設計されているケースが多くなります。

広告に踊らされず、あなたに合う企業を探すべき

今回説明した3つのタイプの会社は、どれがよく、どれがよくないというたぐいのものではありません。ただし、どのタイプの仕事が合うか、人によって向き不向きがあるのは間違いありません。

広告の華々しいエピソードに心躍らされたり、入社早々に成果が上げられるかどうかを気にするよりも、自分の人生やキャラクターと照らし合わせて、3つのうちどのタイプの仕事が自分に合っているかを、よく考えて選んでほしいところです。

それは何も、これから就職する学生だけでなく、すでに社会人になって2~3年くらい経ったビジネスパーソンにも、同じことを言いたいところです。自分の会社・仕事は、3つのどのタイプであり、それは自分に合っているかどうか。

合っているならつらくてもそこで頑張るべき。合っていないのに広告に踊らされて就職してしまった場合は、本当に合っているタイプの仕事への転職を考えてみるのもよいのではないでしょうか。

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海老原 嗣生 雇用ジャーナリスト

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えびはら つぐお / Tsuguo Ebihara

経済産業研究所労働市場制度改革プロジェクトメンバー、広島県雇用推進アドバイザー、京都精華大学非常勤講師。1964年生まれ。リクルートグループで20年間以上、雇用の現場を見てきた経験から、雇用・労働の分野には驚くほど多くのウソがまかり通っていることを指摘し、本来扱うべき“本当の問題”とその解決策を提言し続けている「人事・雇用のカリスマ」。リクルートキャリア社のフェロー(特別研究員)第1号としても活躍し、同社発行の人事・経営専門誌「HRmics」の編集長を務める。
ロングセラーの就職活動本『面接の10分前、1日前、1週間前にやるべきこと』『2社で迷ったらぜひ、5社落ちたら絶対読むべき就活本』(共にプレジデント社)の他、雇用・労働分野の著書多数。

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