そもそも経験の長さと業績の関係は、それぞれの会社の業務内容によって異なります。大きく、3つのタイプに分けられますので、以下、順に説明していきましょう。
タイプ① ある程度の経験がないとできない仕事
ひとつ目は、長期間経験を積み重ねることが大切な、奥の深い仕事です。このタイプの仕事では、入社早々にすごい業績を上げることはありえません。同期入社の間でも、入社した後の数年間は、個人ごとの業績にそれほど大きな差はつかないでしょう。ところが、10年以上仕事を続けると、知らないうちに、かなり大きな仕事ができるようになっている。この場合、10年選手と入社2年目を比べれば、その業績差は何倍にも何十倍にもなるため、若い人は先輩を見て、「すごいなぁ」と感心することになります。
たとえば、銀行や総合商社、大手メーカーなどは完全にこのタイプ①に当たります。考えてもみてください。銀行なら35歳ともなれば、超大手企業相手におカネを貸し出す役割をしている人が多々います。その場合、自社だけでなく何行もの銀行と一緒になって(協調融資)、何億円ものおカネを用意するわけです。
その際には、直接おカネを貸し出すだけでなく、株を発行するという手もありますし、社債を発行する場合もあります。こうしたことを、入社したばかりの若い人ができるでしょうか? 断言しますが、まあ不可能でしょう。
入社当初は個人向けの住宅ローン営業から始めて、その後に中小企業担当となって法人融資を覚え、さらに中堅企業を担当して何行かと一緒になっておカネを貸す方法を知り、それに慣れた頃に、今度は小さめの大手企業で株や債券を覚え……。こんな積み重ねでようやく、銀行員は大きな仕事ができるようになっていくのです。
そこまで成長するためには、すぐ10年くらいはかかってしまうでしょう。総合商社で、たとえばベトナムの原子力発電所プロジェクトのリーダーを任される場合も同様です。ゼネコン(総合建設会社)や大手電機メーカー、制御管理システム会社、電力会社などと1社1社仕事を積み重ねるうちに、大きな仕事ができるようになります。2年目では、これはとても無理ですね。メーカーだってそれは同じです。
このようにタイプ①の業種の場合、大きな仕事をするようになるまでには時間がかかります。ということは、今、例に挙げたような大手企業が採用広告で「若手でも大きな仕事ができる」とうたっていたとしたら、それはほぼ100%脚色だと思って間違いありません。広告に出てくるシンデレラストーリーは、本当に奇跡のようなレアケースを脚色して作っていると言えるでしょう。
中でも、メガバンクなどは採用人数がとても多いために、より多くの学生のハートをつかもうと、ありえない話を広告に書き、リクルーターに語らせるケースが目立ちます。2年目でも大手企業の役員相手にコンサルをしているとか、26歳でプロジェクトファイナンスの要にいるとか。そういう話は、まったくでたらめだと考えたほうがいいでしょう。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら