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日本より深い?ドイツ人の知られざる「マンガ愛」 いかに文化や芸術として社会に根付いてきたか

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  • 高松 平藏 ドイツ在住ジャーナリスト
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が、やがて高級紙の文化欄などが、マンガやコミックにもアートや文学と同様の価値があることに気が付き、マンガが芸術の1つとして捉えられるようになっていった。3回目(1988年)開催の際には、国内外含めて新聞、雑誌に400本の記事が書かれ、40本のテレビ放送が行われた。

コミックサロンの歴史はコミックがいかに文化に発展していったかの経緯を示しているが、マンガの成熟ぶりもその延長線にある。

政治や社会の状況を色濃く反映

文化フェスティバルという観点からも見てみたい。ドイツの各地方都市には演劇、文学、音楽、芸術などさまざまな分野のフェスティバルがある。現在開催されているドクメンタ(5年ごとにカッセルで行われる現代芸術祭)などはその代表格だ。エアランゲン市でもコミックサロン以外に文学やパフォーマンス系のフェスティバルが行われている。

フェスティバルは子ども向けのワークショップから、専門的な内容のプログラムが組まれ、老若男女が楽しむことができるものが多く、間口が広い。他方、一般に演劇や文学、芸術などは現代の社会や政治の状況について、しばしば作品という鏡で表現をするが、批判や時には強い皮肉、あるいは諧謔的なものになる。

また、ドイツの社会は、「生きた民主主義」を実現しようする傾向が強い。すなわち地域社会で誰もが意見を自由に述べ、より多くの議論が起こるようにすることを指す。これは文化にも紐づけられており、フェスティバルの専門的な内容には、政治や社会状況と関連したものも多い。

コミックサロンも例外ではない。展覧会や座談会のプログラムを見ると、コミックとイラストにおけるフェミニズムをテーマにしたもの、ウクライナのイラストレータークラブや、コンゴ民主共和国などアフリカ系作家たちによるもの、ホロコーストの記憶・記録、生存をテーマにしたマンガプロジェクトなどがある。ここからも、コミックやマンガも今やドイツの文化の一角になり、深いところまで来ているのがわかる。

ホロコーストの記憶・記録、生存をテーマにしたマンガプロジェクトの作品「しかし、私は生きている」(写真:筆者撮影)

世界におけるマンガ・アニメというと、「クールジャパン戦略」を思い出す人も少なくないだろう。世界から「かっこいい」と捉えられる日本の魅力を世界に広げ、日本のソフトパワーを強化しようというものだ。しかし、コミックサロンを見ていると、ドイツではこの戦略とはまた違う独自の発展を遂げていると言える。

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