日本より深い?ドイツ人の知られざる「マンガ愛」 いかに文化や芸術として社会に根付いてきたか
ドイツでマンガブームがおこったのが1990年代の後半。以来、筆者もこのフェスティバルを取材しているが、2000年代ではコスプレをしているのは若者ばかりだった。もちろん今回も若者のコスプレイヤーがいるが、ベテランもかなり目につく。
この変化を端的にあらわしているのが、フェスティバルで行われた講演「初心者のためのコスプレ」。コスプレイヤーのスヴェトラーナさんによるものだ。同氏は1986年生まれの36歳。2003年に初めて衣装を自作した。
現在はイベント出演などのほか、衣装作りのための書籍や素材を裁断する際の「型」、自身のコスプレ写真集などを販売する「カムイ・コスプレイ」を夫のベニークイントさんと経営。YouTubeチャンネルには61.6万人(執筆時)の登録者がいる。
講演では衣装作りの初期の試行錯誤の体験談などを語った。コスプレイヤー年前に1人のマンガファンのコスプレが事業にまで発展したかたちで、ドイツにおけるコスプレの成熟度が透けて見える。
マンガの2021年の売り上げは前年比77%増
マンガの存在感はもちろん出版業界にも及んでいる。報道によると、2008年以来、マンガ出版の規模は増加傾向。とりわけ、2021年は1600を越えるタイトルが出版され、売り上げは前年に比べて77%増加。マンガ市場の拡大は世界的な傾向だという。この背景は諸説あるが、コロナ禍による巣ごもりも影響したと考えられる。
さらに、マンガブームから四半世紀という「時間の経過」にも市場の成熟事情にもつながっている。ドイツ国内のマンガ出版大手カールセンのクラウディア・イェルサレム-グローエンバルトさんによると、「1990年代再後半のセーラームーンやドラゴンボールで育った世代が、自分の年齢に耐えうるマンガ作品を読みたがっている」という。
マンガ人気はなぜ起こったのだろうか?
2006年にマンガ出版大手の1つ、エグモント社のパブリッシングディレクター(当時)、ゲオルク・テンペル氏に筆者は取材している。同氏によると、価格や表現形式、形態としての書籍に特徴があったことを人気の理由として述べていた。
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