日本より深い?ドイツ人の知られざる「マンガ愛」 いかに文化や芸術として社会に根付いてきたか

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すなわち、マンガはコミックに比べてモノクロ。コマ割りも特徴があり、コミックに比べて映画を見ているような連続性がある。製本スタイルもドイツでは通常左綴じだが、それに対して、日本式で右綴じになっている。ここに新規性があった。

その上でマンガ人気の理由を同氏は「世代論」の観点から分析していた。いつの時代も若者は親世代との区別をつけたがるが、マンガは(当時の)若者にとって親との違いを強調する道具ではないかというもの。

というのも、彼ら(現在30~40代)と親(現在50~70代)は聞いてきた音楽の分野やファッションはたいして変わらない。2000年代初頭「ロックイベントでは別々で来ていた親子が会場でばったり会うということある」と指摘されていた。それゆえにコミックとは内容やスタイルの違うマンガは新しく、子世代には「クール」だったのだ。

また、コミックは「子どものもの」という捉え方が強く、玩具を買い与えるように、親が子どもに買い与えるものだった。対してコミックよりも安価なマンガは子どもが小遣いで自ら買うことができた。マンガは女性寄りのテーマも多いことから読者層に女性が多いのも特徴で、ドイツの「Manga-ka(漫画家)」も女性作家が目立つ。

強い反対を受けたコミックサロン

ところで、ヨーロッパを見ている限り、マンガは芸術としても捉えられている傾向がある。

同市がコミックサロンを始めた1984年当時は、ドイツではマンガはほとんど知られていなかった。しかし、コミックをテキストとビジュアルを組み合わせたメディアとして想定し、マイナーなメディアの「場」を作るという文化的動機からサロンは作られた。

ここで重要なのは、ドイツの地方自治体は独自の文化政策を展開しているだ。文化局の職員も専門の教育を受けた人が、継続的に取り組んでいる。また文化政策を自分のテーマとして取り組む市議もいる。

ただ、1980年代当時は、コミックはあくまでも「子どものもの」と見られ「文化」ではなかった。コミックサロンを立ち上げた当時の文化局のディレクターによると、当初は社会的・文化的エリートに属する人たちはかなり強い抵抗を示した。定期的に開催することに対して政治家や報道関係者もかなり疑問を持っていたという。

次ページ時代のテーマや問題意識も反映
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