日本に自動車生産は残るのか?--トヨタ、日産の賭け “最後”の国内工場(下)
九州工場から北へ車で20分ほどに工場を構える鋳造メーカーの戸畑ターレット工作所。06年に自動車部品製造を始めた新規参入組だが、素材形状の変更によりエンジン関連部品で3割以上のコスト削減を提案した。初めて実現した日産向け取引だ。
実は九州には日産だけでなく、トヨタやダイハツ工業も進出し、自動車産業が集積している。児玉工場長は「それが九州のもう一つの地の利。今後も地場メーカーを積極的に開拓する」と説明する。
LCCや地場調達は、何も今に始まった話ではない。しかし構成部品、つまり「部品の部品」まで含めて、すべて徹底しなければ、国内生産は維持できない──。九州ビクトリーにはそんな危機感がある。
サプライヤーには痛みも伴いそうだ。今後は同じ国内でも、人件費が相対的に高い関東や関西の工場は維持しにくくなる。サプライヤーのLCC移転が進めば、国内100万台生産は維持されたとしても、“内なる空洞化”が進むことになる。
「うちの工場にも日産の社員が来る回数が増えた」。それでもある部品メーカー幹部は、九州ビクトリーに日産の変化を感じ取っている。これまで日産は購買部門の力が比較的強く、原価低減の要求が「コミットメント」として独り歩きしていた面があるという。サプライヤーとの改善活動に後れを取っていたとの指摘もある。だが「今回はわれわれの提案を聞こうという姿勢がある」。
九州工場の分社化は、まず自らが変わるという、日産の意思表示だ。1ドル=80円でも利益を出すという高いハードルを前に、日産はあらためて、モノ作りの原点に戻りつつあるのかもしれない。
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(西村豪太、並木厚憲 =週刊東洋経済2011年3月5日号)
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