日本に自動車生産は残るのか?--トヨタ、日産の賭け “最後”の国内工場(下)

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日本に自動車生産は残るのか?--トヨタ、日産の賭け “最後”の国内工場(下)

昨年10月。日産自動車は九州工場の分社化の方針を発表した。現在労働組合と交渉中で、今秋にも九州工場を母体とした新会社設立を目指す。約3600人の従業員は原則、新会社に転籍することになる。

狙いは賃金水準の抑制だ。「九州の物価は東京と比べ約2割安い。当面は現状の賃金水準を守るが、潜在的に下げる余地がある」(西川廣人・日産副社長)。ただ、近接するトヨタ自動車九州など、地方工場を別組織で運営するのは珍しくない。あるサプライヤー幹部は「もともと完成車メーカーの給料はべらぼうに高い。分社化は当然の判断」と語る。

実は分社化の狙いは、それだけではない。それと前後し、今後の日産の国内生産を左右する、一大プロジェクトが進行しているのだ。

コスト3割削減目指す「九州ビクトリー」

「13年度までに3割の原価低減をお願いしたい。そうすれば、4~5年以上の継続取引を保証します」。昨年4月、福岡県にある日産九州工場。居並ぶサプライヤー幹部の前で児玉幸信・工場長はそう宣言した。

九州工場は輸出比率が約75%と高く、昨年からの急激な円高が直撃していた。自動車メーカーにとって部品調達は原価の約7割を占める。調達構造にメスを入れなければ、今後の生産水準を維持できない。

プロジェクト名は「九州ビクトリー」。調達を中心に工場の生産性向上など徹底したコスト削減で、1ドル最後=80円でも輸出採算がとれるようにする。当初プロジェクト名は「九州サバイバル(生き残り)」だったが、児玉工場長は「ビクトリー(勝ち残り)」に変えた。海外工場を上回るコスト競争力をつけ、自ら勝ちに行くという意思表示だ。

日産は子会社の日産車体と合わせ、国内に5つの完成車工場を持つ。それらに明確な役割を与え、世界のマザー工場と位置付けることで、結果として国内生産100万台維持を目指す(下地図参照)。昨年11月に電気自動車「リーフ」の生産を開始した神奈川県の追浜工場は、先端技術・新工法に特化する形で、生産台数自体は減る方向にある。その中で九州工場は、低コスト化を実現し、生産量を維持する役割を担う。


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