老親が「実家を片付けられない」のにはワケがある 松本明子さんがプロに聞く「生前整理」のコツ
松本:エンディングノートを活用することで、自分の希望する介護や終末期を実現するには生前整理が必要なことを親に知ってもらうわけですね。
上野:物の片づけは、そうやって心の片づけと並行して行う必要があるのです。
もちろん、在宅介護には事前に整理が必要だと理解しても、まだ元気だからこのままでいい、という方もいらっしゃるでしょう。その場合は、生前整理を親が望んでいないわけですから、それ以上は進めません。在宅介護の直前まで片づけはストップです。
あるいは施設を希望される場合でも、元気なうちはと、本人が片づけを望まない場合も動けません。無理にやろうとしても反発されるだけです。
心を尽くして、親子で一緒に書いていく
松本:エンディングノートを一緒に書きたいと思っても、親がその気にならない場合もあるのではないですか。
上野:はい。実際、書いたことのある人は2割程度です。高齢になるとまず文字を書くのが億劫になってしまうからです。
松本:そんなに大変なんですか?
上野:試しに一度書いてみるといいのですが、結構大変です。
実は私、30代の頃に大手術をして初めて死を意識したんですが、その際に「親しい人はこの人たちで、預金はどこにいくらあって、年金手帳の番号はこれで、部屋にある本はこうして、洋服はこうして」と、まとめてみたのです。
いまでも覚えていますが3カ月かかりました。30 代で3カ月かかるものを高齢者に一人で書けと言っても、そう簡単に書けません。
ですから、「自分らしい最期を迎えてほしいから、その手伝いをさせてほしい。一緒に書いてみない?」と、心を尽くして子どもが親に気持ちを伝えるしかないと思うのです。その心にうそがなければ、思いは伝わるはずです。