老親が「実家を片付けられない」のにはワケがある 松本明子さんがプロに聞く「生前整理」のコツ

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上野:おっしゃるとおりです。ですから、親世代の物を捨てない生き方を、理解しなくてもいいから、受け入れて寄り添うことです。

その姿勢なしに、親の心はなかなか生前整理に向けて動いてはくれないと思います。

松本:まずは親の価値観を受け入れること。それが生前整理をうまく進めるための第一歩ということですね。

上野:そうです。ただし、それには親のこれまでの人生に敬意を表して、物にまつわるエピソードなども根気よく聞いてあげないといけないこともあります。人間、年をとると同じ話を何度も繰り返しますが、それにも我慢して耳を傾ける。これはもうある種の修行です(笑)。

ただ、そうすることで生前整理を進めるための前提条件である親子の信頼感が増すわけです。

親には「片づけられない理由」があるかもしれない

松本:年をとると気力も体力も衰えます。親が物を片づけないのは、それも理由の一つかなと思うのですが、どうでしょう。

上野:重要なご指摘です。たとえば、実家が以前と比べてホコリが目立っていたり、物が出しっぱなしになっていたりしたら、足腰が弱って掃除が大変なのかもしれません。

視力が衰えれば汚れにも気づきにくくなり、記憶力が衰えれば同じものを二度買うこともあるでしょう。

また嗅覚が弱れば生ゴミの臭いやカビの発生にも気づきにくくなります。

最近は高齢者が自分の身の回りのことをしなくなるセルフ・ネグレクトがよく言われますが、食べたものやゴミの放置はその典型とされています。

松本:親には片づけられない理由があるかもしれないということですよね。

上野:その視点を持つことは大事です。でもこれらは一見すると、怠けているだけにも見えますから、子どもはつい「だらしない」「ボケたんじゃないの」などと言ってしまいがちなのです。

松本:わかります。自分の親だからこそ、しっかりしてよ、と思っちゃう。

上野:でも、これは言ってはいけません。親のプライドを傷つけるからです。

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