実は愛川さんの任用区分は「再任用教員」ではなく、「臨時的任用教員」というものだった。この場合、任用期間は「1年」とは限らず、数カ月単位になることもある。例えば、育休中の正規教員が職場復帰するまでの間、わずか1~2カ月だけ雇われるようなケースも珍しくない。
愛川さんが提示された辞令も、4月1日から5月31日までわずか2カ月間のものであった。それにしても、なぜこのような雇用契約を受けてしまったのか。
生徒に別れを告げられないまま退職
「2カ月だけの常勤なんて話は聞いたことがなかったので、当初は悩みました。でも、その校長から『(雇用は)延長される可能性が高い。万が一の場合は、次の話を教育委員会が手当すると言っています』と言われ、渋々承諾しました。校長からは『これを断ると、次の話はないかもしれませんよ』とも言われたので、その話を受けるしかなかったんです」
その学校では40代の教員が3カ月間の病気休暇に入っており、6月1日に復帰予定であった。予定どおりその教員が復帰すれば、愛川さんの勤務はそこで終了となる。ただ、病気の理由がメンタル的な問題だったため、その校長は「延長される可能性が高い」と言い、愛川さんもその言葉を信じたのだった。
ところが、わずか4カ月で愛川さんは学校を去ることになる。休職していた教員が7月下旬から正式に復帰し、「万が一の場合は手当てする」と言われていた次の職場は用意してはもらえなかった。当然再雇用は継続されると思っていた愛川さんにとっては、突然の「雇い止め」だった。
「2カ月だけの勤務を引き受けてくれる人は、なかなかいません。そこで身近な所にいた私に白羽の矢が立ったのでしょう。学校を去ることが決まった時はすでに夏休みに入っていたので、離任式はもちろん、授業を担当した生徒たちにお別れの挨拶もできませんでした」
愛川さんは悔しそうにそう語る。
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