2011~12年のグローバル・マクロ経済シナリオは「弱含みの回復」で変わらず《ムーディーズの業界分析》
マクロ経済のリスクシナリオにおける政府のデフォルトリスクの位置づけ
生産活動と消費者信頼感指標が最近、改善基調を強めている中、懸念の対象は、民間セクターの回復能力から、公共セクターが最近の公的部門のバランスシート拡大を抑制し、銀行セクターの偶発債務の顕在化を抑制できるかどうかにシフトした。EUが昨年、ギリシャとアイルランドを救済したにもかかわらず、ストレス下にある国の1つ、あるいは複数がデフォルトするリスクが、依然として議論の対象になっている。
不安定な市場の信認、政府と銀行セクターとの密接な相互関係、世界的な金融危機後の銀行システムの強度に対する根強い懸念が見られる現在の環境では、ユーロ圏政府のデフォルトが悪化シナリオの引き金となり、ユーロ圏の金融機関と、おそらくは他の政府にも感染が広がる可能性がある。そのため、欧州当局ならびに各国政府は、このような事態を防ぐために十分な政策措置を講じる、とムーディーズは予想している。したがって、このシナリオが実現する可能性は極めて低い。
一方、金融システムの強化と市場の信認の改善が、政府のデフォルトの影響を抑制すると考える向きもあろう。「秩序立った」政府債務の再編が進められれば、影響の拡大が最小限に抑制されるという可能性があるが、これは各国個別の状況(財政再建を長期化させた政府の意思や景気回復の速度など)に左右される。
現在のところ、このような「秩序立った」デフォルトのシナリオも、実現の可能性は低いとムーディーズは見ている。ただし、ムーディーズのソブリン格付けに反映されているように、国によってリスクは異なる。また、ある国の債務再編は、ユーロ脱退と同義ではない。実際、1つ、あるいは複数のユーロ加盟国がユーロを脱退する可能性は、政府債務再編が行われる可能性よりもさらに低い。
結論を述べると、ユーロ圏のリスクシナリオが現実のものとなるかどうかは、最終的には(1)政府の中期的財政再建計画と、成長重視の経済戦略の信頼性、(2)政府と銀行への金融支援を継続するECBの意思、および(3)民間債務を政府のバランスシートで引き受けることを制限する政府の能力、にかかっている。
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