2011~12年のグローバル・マクロ経済シナリオは「弱含みの回復」で変わらず《ムーディーズの業界分析》

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リスクシナリオ1: 景気の「二番底」

このストレスシナリオは、政府が財政引き締めを行っても信認を十分に回復できず、民間投資・消費の力強い拡大を喚起できないと想定している。また、銀行システムの健全性に関する不確実性が払拭されないこと(おそらく、銀行セクターの戦略が十分な信頼を得られないことに起因)や、欧州の主要な貿易パートナー、中でも米国の成長の低迷によって、財政引き締めのマイナスの影響が増幅される可能性もある。

このシナリオでは、成長率が大幅に低下するリスクが高く(11年は0.5%)、景気が完全に「二番底」に陥る可能性が顕在化する。また、このシナリオでは、政府は銀行支援に要した資金を補填するために、さらに厳しい財政引き締めを行わなくてはならず、民間セクターの債務再編の必要性が増大する可能性が高い。デフレ圧力が、少なくともさらに数四半期にわたって広がり、財政再建計画の実施を一層困難にし、実質的な債務負担が増大する。これは、不安定な均衡状態である。

リスクシナリオ2: 急激な混乱

この厳しいストレスシナリオは、低い成長率や失業率の高止まりなどのネガティブな経済情勢が持続し、政府債務状況の悪化と銀行の脆弱性に対する政策対応への不信感が相まって、制御不可能な悪循環がユーロ圏経済を脅かす、と想定している。50年に及ぶ欧州統合プロジェクトにとっての厳しい、存在にかかわるともいえる危機がもたらす帰結として、次のような極端で、非常に異なる2つの可能性が考えられる。
2A: 欧州統合がさらに進む(例: 欧州債務機関、加盟国間の資金の管理・移動を行うEU連邦予算機関などの設立)。こうした展開は、各国首脳が危機を利用してEU統合を推進してきた過去の経緯と軌を一にするものである。このような規模の重要な政策展開は、円滑に実施されると想定した場合には、長期的に信認の回復をもたらし、最終的には良好な結果につながるとみられる(中心シナリオに回帰する)。
2B: 政府のデフォルトやユーロ圏の分裂などの突然の混乱。

このように、極端なリスクシナリオ2からは2通りの展開が考えられる。リスクシナリオ2は、生じうる結果の方向性の明確さではなく、不確実性の強さを特徴としている。

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