「ロッキー」権利持たないスタローンの不条理事情 脚本、監督手掛けた作品を取り戻す最後の戦い
スタローンが『Variety』に語ったところによれば、この時、彼はスタジオから、脚本執筆料として2万5000ドル、出演料として1週間360ドルを受け取っている。資産価値4億ドルと推定される現在のスタローンにしてみれば微々たる金額だが、当時の彼にとっては非常に大きかった。その頃、スタローンは、家賃を払うために愛犬を売らなければいけないほどお金に困っていたのだ(『ロッキー』が決まったおかげで、スタローンは無事に愛犬を買い戻すことができた)。
無名俳優が主役ということで製作予算は100万ドルに削られ、撮影はわずか25日間で行われた。だが、その映画は、全世界で2億2500万ドルを売り上げる大ヒットとなったのである。批評家からも高く評価され、アカデミー賞も作品、監督、編集の3部門で受賞。スタローンも主演男優部門と脚本部門にノミネートされた。
続編では監督としても成功
ここまで成功したとあれば、続編が作られるのは自然なこと。続編では監督も務めたいというスタローンにスタジオは反対したが、ウィンクラーとチャートフは前回と同じように彼の要求を聞き入れ、その願いはかなった。そしてスタローンは見事にも、1作目と同じだけの世界興収を上げるヒット映画を作ってみせたのである。その次の『ロッキー3』も、スタローンが監督。権利についての相談を弁護士に持ちかけたのは、この映画のヒットを見届けてからだ。
だが、弁護士の返事は、「それは無理」と、すげなかった。業界でバックエンドと呼ばれる、興行成績に応じて支払われるボーナスも与えられるスタローンは、すでに十分すぎるほど儲かっているというのが理由のひとつ。それに、プロデューサーらは、無名だったスタローンにチャンスをくれた人たちである。そもそも、一度獲得した権利を後になって別の人にも分けてあげるなどということはこの業界で絶対に起こらないとも、弁護士は言った。
それでも納得いかないスタローンは、ある日、プロデューサーらに「台詞を書いたのは僕。(ボクシングの)コレオグラフィー(演出)を作ったのも僕。僕はあなたたちに忠実でい続けてきた。宣伝活動もやった。監督もした。こんな僕に1%の権利もくれないなんて、心苦しくないんですか?」と面と向かって抗議する。だが、彼らの答えは「君はお金をもらっている」だった。
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