「タスク管理できない」と悩む人の大きな勘違い 「仕事はマルチタスクで乗り切れる」に潜むワナ

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しかし、彼らは決して、マルチタスクをこなすことのできる人間離れした脳を持っているわけではありません。彼らは、一度に1つずつの仕事に集中して、着実に仕事を進めている、つまり集中してシングルタスクを進めているだけなのです。タスク管理ではよく「今、取り組んでいるタスク(シングルタスク)に集中する。その間は他の仕事のことを忘れられる仕組みを作る」と言います。

「シングルタスクに集中する」ができない

できる人はほとんどの場合、覚えておくべきプロジェクトやタスクを記録し、専用のツールなどで管理しているだけなのです。

仕事が立て込んでくると、脳内に多くのことを記憶する必要が生じます。脳の容量は有限なので、たくさんのことを記憶しなければならない場合、脳がパンパンになってしまいます。

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その結果、単に仕事を覚えておけないだけでは済まなくなり、気が散ったりしてシングルタスクに集中できなくなるのです。この「シングルタスクに集中する」というのは、当たり前のことのように聞こえるかもしれません。

しかし、睡眠不足で集中できない、同僚のおしゃべりで気が散る、家庭でのいざこざが心に引っかかっているなど、タスクへの集中を乱す要因はいくらでもあります。そのため、「シングルタスクに集中する」という当たり前のことが、なかなか上手くできないという人は少なくないのです。

さて、あなたはタスク管理に対して、どれほど誤解していましたでしょうか? いくらカレンダーやToDoリストを使ってタスクを管理していても、その方法が間違っていては、できるものもできなくなってしまいます。誤解を解くことだけでもタスク管理術との向き合い方が変わります。ぜひ意味のあるタスク管理をしてください。

佐々木 正悟 心理学ジャーナリスト

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ささき しょうご / Shogo Sasaki

「ハック」ブームの仕掛け人の一人。専門は認知心理学。1973年北海道旭川市生まれ。97年獨協大学卒業後、ドコモサービスで働く。2001年アヴィラ大学心理学科に留学。同大学卒業後、04年ネバダ州立大学リノ校・実験心理科博士課程に移籍。2005年に帰国。帰国後は「効率化」と「心理学」を掛け合わせた「ライフハック心理学」を探求。執筆や講演を行う。

著書に、ベストセラーとなったハックシリーズ『スピードハックス』『チームハックス』(日本実業出版社)のほかに『先送りせずにすぐやる人に変わる方法』(中経出版)『一瞬で「やる気」がでる脳のつくり方』(ソーテック)など。「シゴタノ!-仕事を楽しくする研究日誌」にて連載中。

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