フリード/シエンタ購入者が示す「強さと弱さ」 商品力は高くても「メーカーの力」に明確な差
(1)新規:初めて自動車を買った人
(2)2連続リピーター:1つ前の車と同じメーカーから購入した人
(3)3連続リピーター:1つ前だけでなく2つ前の車も同じメーカーの人
(4)スイッチ:1つ前の車と違うメーカーから購入した人
(5)出戻り:以前購入したメーカーに戻ってきた人
この5つのセグメントの構成を車種ごとにまとめたものが、「顧客構成」である。フリードとシエンタを比較すると、フリードは「スイッチ」「2連続リピーター」が多く、その分「3連続リピーター」が少ない。一方のシエンタは「3連続リピーター」が多くなっている。
顧客構成の概念において、獲得すべき人々は「3連続リピーター>2連続リピーター>スイッチ」の順である。メーカーによってばらつきはあるが、3連続リピーターはスイッチの人たちよりも、メーカー再購入意向が約2.5~5倍も高い結果が出ている。
よって「スイッチ」よりも「2連続リピーター」を、「2連続リピーター」よりも「3連続リピーター」を多く確保することが、継続的に収益を確保していくうえで重要なのである。
トヨタの圧倒的「生涯顧客率」
ここまで「メーカー再購入意向」、そして「顧客構成」を分析してきた。最後に、上記2変数から定義した「生涯顧客率」という指標も見ていきたい。具体的にはユーザーを次の5つにわけている。
(B)準生涯顧客:生涯顧客より少しトーンは落ちるが、今後も購入し乗り続ける可能性の高い人
(C)ニュートラル:この先の意思決定は未定な人
(D)離脱予備軍:このままでは他社へ流出するおそれのある人
(E)次期離脱:このままいけば高い確率で他社へ流出する人
メーカーとして確保すべきは「生涯顧客」である。フリードとシエンタについて結果をまとめてみると、シエンタの「生涯顧客」は25%と多い。「準生涯顧客」まで広げれば54%程度と半数を超える。一方のフリードは生涯顧客=10%、生涯顧客+準生涯顧客=約30%と少ない。
販売台数は拮抗しており、車種特徴も類似点が多く、購入者からの評価ポイントも似ている。それなのに生涯顧客率では大きな差が生じている。ここに現在のトヨタの強さが、そしてホンダの課題が見て取れる。
代替購入が大部分をしめる自動車市場において、強固な顧客基盤の維持拡大は非常に重要だ。生涯顧客の多さは、顧客基盤の強固さを端的に表わしている。ライフステージの変化にともなってほしいボディタイプやサイズが変わっても、同じメーカーから購入する可能性の高い生涯顧客は、利益貢献の大きい優良顧客だからだ。
顧客基盤を強固にするには車という商品そのものだけでなく、企業のイメージや販売店、アフターサービスなどさまざまな要素がある。フルモデルチェンジが予想される中、商品力の強化でどこまで生涯顧客を獲得できるのか。両モデルの今後をマークしていきたい。
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