スパルタが陰謀を画策していたのは明らかだったが、今回の件でそれがよりはっきりしたといえるだろう。
条約によれば、我々は相互に調停を受け入れる義務があり、既存の領土については保持できることになっていた。ところがスパルタは調停などおこなうつもりはなく、我々の申し出も受けるつもりはないようだ。
彼らはこの摩擦を外交ではなく戦争によって解決しようと目論んでおり、提案ではなく命令を突き付けてきた。
スパルタは我々にポテイダイア(アテネの実質的従属国の1つ)の包囲を解き、アイギナ(アテネの実質的従属国の1つ)の独立を認め、メガラ条例(スパルタ側の都市、メガラに対してアテネが行っていた経済制裁)を破棄することを求めている。さらに最後の使節は、ほかのギリシア諸国の自治を認めることを要求してきた。
メガラ条例の破棄はスパルタにとって最優先事項であり、それさえ破棄されれば、戦争突入はないという。
つまり彼らの要求を拒否すれば、それは戦争を意味することになるが、それを無益なものであるとは思ってほしくない。また、そのような「ささいな」理由によって戦争を起こすことに、良心の呵責(かしゃく)を覚える必要もない。
この一件はいわば、我々の決意のほどを試すものなのだ。もしここで譲歩したら、スパルタは我々がひるんだと見て、さらなる要求を突き付けてくるだろう。
一方、ここで断固たる決意を見せつけることができれば、我々を対等の交渉相手とみなすはずだ。
合衆国であるスパルタの弱点
今こそ決断のときだ。自らに危害がおよぶ前に服従するか、あるいは戦うのか(わたしは戦争こそが正しい選択だと考える)。
戦いの口実がなんであれ、けっして譲歩してはならないし、財産を失うことを恐れてはならない。隣国が、対等な国家を相手に手続きを無視して要求を突き付けてくるとき、要求がなんであれ、その目的は相手の隷属化にほかならない。
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