徳川家康、知られざる健康オタクぶりが凄すぎた 麦めしを好み、健康のために自ら薬を調合

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また、家斉が健康のために取っていた、極め付きのものがある。それは「オットセイの陰茎と睾丸(こうがん)を粉末にした漢方薬」だ。家斉が、この不気味な薬の服用を欠かさなかった理由はただ1つ。「精力をつけるため」である。

その効果もあってか、家斉は40〜50人の側室を持ち、50人以上の子どもを残しているのだから、すさまじい。家斉はこのオットセイの精力剤もやはり家臣たちに分け与えている。もらったほうも戸惑いそうだが、断るわけにもいかなかっただろう。

69歳で亡くなるまで実権を握った

「生涯現役」のシンボルのような家斉は、なかなか息子に将軍の座を譲らなかった。嫡男の家慶は45歳にして、ようやく将軍の座を家斉から引き継いでいる。家慶としても「ようやく退いてくれたか……」とほっとしたに違いない。

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ところが、家斉は将軍を退いた後も大御所として権勢を振るい、69歳で亡くなるまで実権を握り続けた。チーズやミョウガの効果か、家斉の在位は50年にも及び、歴代将軍最長となった。

ただし、世界に目を向ければ、そのように健康を意識して、食事に気を配るリーダーばかりではない。朝一から64皿食べたフランスのルイ14世や、処刑の前にもカツレツ5枚を食べたルイ16世、そして古くは1日で約1億円分食べたローマ皇帝アウルス・ウィテッリウスなど、大食漢の権力者も多くいる。

農政家の二宮金次郎はこんな言葉を残している。

「凡人は小欲なり。聖人は大欲なり」

大欲とは万民の衣食住を充足して、幸福にしようと欲することを指す。一時の快楽に身をゆだねる大食いのグルマンより、権力を握り続けようとする幕府の将軍たちのほうが、案外腹の底に「大欲」を持っていたのではないだろうか。

真山 知幸 著述家

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まやま ともゆき / Tomoyuki Mayama

1979年、兵庫県生まれ。2002年、同志社大学法学部法律学科卒業。上京後、業界誌出版社の編集長を経て、2020年独立。偉人や歴史、名言などをテーマに執筆活動を行う。『ざんねんな偉人伝』シリーズ、『偉人名言迷言事典』など著作40冊以上。名古屋外国語大学現代国際学特殊講義(現・グローバルキャリア講義)、宮崎大学公開講座などでの講師活動やメディア出演も行う。最新刊は 『偉人メシ伝』 『あの偉人は、人生の壁をどう乗り越えてきたのか』 『日本史の13人の怖いお母さん』『逃げまくった文豪たち 嫌なことがあったら逃げたらいいよ』(実務教育出版)。「東洋経済オンラインアワード2021」でニューウェーブ賞を受賞。

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