日本に1%成長の実現が強く求められる切実な訳 コロナもインフレも重要だがもっと重要なことだ

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この経験から、「財政支出の財源は、中央銀行が貨幣を発行して賄えばよい」というMMF(現代貨幣理論)の考えが正しいように思われた。

しかし、そうしたことは成立しない。これは、いまアメリカがインフレに襲われていることから明らかだ。

MMFは「インフレが起こらないかぎり」という限定条件付きでマネーによるファイナンスを正当化しようとしたのだが、まさにその限定条件が成り立たないことがわかったのである。

MMFのような無責任な考えではなく、正面から財源確保の問題に取り組まなければならない。

とくに成長が必要なのは、日本

以上で「成長」といったのは、景気の話ではない。景気刺激とは、供給能力を所与として(つまり、短期的な観点から)、需要を増やすことだ。

以上で述べたのは、そうではなく、長期的な供給面のことである。

十分な供給能力を持つことは、インフレを防ぐためにも重要な課題だ。

人口が高齢化した社会はインフレに陥りやすいという議論がある。労働力不足によって供給力が落ち込むからだ。

これを克服する方法は、技術革新と労働力率の向上しかありえない。

この数年間、われわれは、コロナとインフレという問題に振り回されて、長期的な課題を忘れている。

もちろんコロナもインフレも重要な問題だが、もっと重要なことがあるのだ。そして、この問題がとくに重要なのは、世界で最も深刻な高齢化問題に直面する日本においてなのである。

野口 悠紀雄 一橋大学名誉教授

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のぐち ゆきお / Yukio Noguchi

1940年、東京に生まれる。 1963年、東京大学工学部卒業。 1964年、大蔵省入省。 1972年、エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。 一橋大学教授、東京大学教授(先端経済工学研究センター長)、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、一橋大学名誉教授。専門は日本経済論。『中国が世界を攪乱する』(東洋経済新報社 )、『書くことについて』(角川新書)、『リープフロッグ』逆転勝ちの経済学(文春新書)など著書多数。

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