安倍元首相が日本を地経学の中に位置づけた意味 QUADやCPTPPの創設により何がどう変わったか

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中でもQUADが重要な役割を果たしたのは医薬品部門である。2021年はまさにパンデミックの最中であり、世界的にワクチンが不足している状況であった。いち早くワクチン開発に成功した中国は、ワクチンを開発することができない途上国に対して、いわゆる「ワクチン外交」を展開した。

中でもパラグアイは台湾と国交を持つ国であったため、パラグアイに対して、ワクチンを供給する代わりに台湾と断交することを求めた。これを見たアメリカは、インドに協力を依頼し、インドが製造しているアストラゼネカ社製のワクチンをパラグアイに提供することで、中国の言いなりになることを避け、台湾との国交を維持することができた。

このように、QUADは地政学だけでなく、地経学の分野でも協力関係を築くためのプラットフォームとなっており、QUADは広い意味での国際秩序を安定させるための枠組みとして位置づけられている。QUADがこうした地経学分野における協力の枠組みとなる流れを作ったのはQUADを自由で開かれたインド太平洋という構想に結び付け、軍事のみならず経済においても開かれた秩序を創り出そうとした安倍元首相であった。

3.CPTPPの創設

安倍元首相の地経学的な実績でより重要なのはCPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)の創設であろう。CPTPPは周知のとおり、TPPからアメリカが離脱したことによって崩壊に追い込まれるところを、安倍元首相がリーダーシップを発揮し、アメリカを除くTPP参加国すべて(11カ国)を取りまとめて、高い水準の関税引き下げ率と高い基準での国際ルール作りの仕組みを維持したまま、環太平洋地域における自由貿易体制を守った。

日本とアメリカが主導したTPPは環太平洋地域における友好国を軸に交渉が進められたことから、中国を排除した貿易圏を創り出すことを目指したものとみられていた。しかし、その主たる目的は中国との対抗関係というよりは、2000年から始まったWTO(世界貿易機関)のドーハラウンドが一向に進展せず、WTOが国際経済秩序を形成することができなくなっている中で、高い基準の自由貿易圏を環太平洋地域に作り出すことで、一層の自由貿易を進めることに主眼があった。

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