基本的なメッセージは、感染者数が拡大した際に、入院基準を本当に入院治療が必要な人に絞るという方向に変更しないと、医療提供体制が逼迫する可能性が存在するということである。BA.5は感染力が高いため、行動制限による感染拡大抑制効果は小さいと考えられるので、対策の中心は、医療提供体制の充実になる。また、重症者数の減少のためには、高リスク者への4回目ワクチン接種率の上昇が効果的である。
III. 具体的な対策
A. 診療体制の充実と病床の確保を進める対策
A1. ゾーニングと確保病床を病棟単位から病室単位にする
現在のコロナ病床のゾーニングは病棟単位で行われているが、病室単位で行うことで、受け入れ可能な病床数が増加する。また、病床を確保するための空床・休床補償も病室単位に変更することが必要である。さらに、新型コロナ感染者も地域の一般の医療機関での診療や入院を原則とする方向に変えていくべきであり、空床補償も縮小・廃止する方向性を議論すべきである。
診療報酬の特例制度は延期されるべき
A2.高齢者施設での感染者は、施設での治療を原則とする
第6波の経験からわかったように、高齢者施設でコロナ感染者が出た場合、急性期病院に入院させるよりも、できる限り医療者が高齢者施設に出向いて治療を行うほうが、QOLを落とさない意味でも効果的である。「高齢者施設での感染者は、原則として施設に在所したままで治療する」という明確な方針を政府が打ち出すべきである。
そのためには、医療者が高齢者施設に往診することを促進する必要がある。現状、診療報酬面での手当てとして、「医療者が高齢者施設に往診して医療行為を行った場合は、診療報酬に加点する」という特例が作られているが、7月末でその特例の有効期限が切れる。診療報酬の特例制度は延期されるべきである。
A3.ICUやHCUなどユニット病床を効率的に運用して重症者を治療する
第6波までは、ICUやHCUなど、重症者の治療に使用すべきユニット病床を、軽症者が長期間にわたって占有している状況が各地の医療機関で散見された。同時に、重症者がユニット病床に入れず、一般病床のみで治療を受けた例も第6波では増えていた(重症者の入院患者のうち21%が一般病床のみで治療を受けていた)。第7波に際しては、入院基準の明確化により、ICUやHCUを軽症者が使用する状況を減らし、重症者がユニット病床で適正な医療を受けられる状況を確保する必要がある。