第7波に最適な医療提供体制にする為の政策提言 行動制限課さずにオミクロン株に対応するには

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A4. インフルエンザと同等に地域の医療機関で診療する

感染者数が増加していった場合に検査・診察の体制を充実させる必要がある。インフルエンザが一般の診療所で診察できることと同様に、重症化率が低くなった新型コロナ感染症も地域の診療所での診察を原則とするべきである。これについては、診療所等での感染を危惧する根強い慎重論がある。「インフルエンザはタミフルなどの治療薬があるから感染リスクがあっても診療所で治療できるが、コロナは安価な治療薬が確立していないので院内感染のリスクは冒せない」という議論である。こうした慎重論には2つの反論がありうる。

・ タミフル等は回復までの時間をわずかに1日程度早める効能はあるが、それ以外にさほど顕著な効果があるわけではない。そのため諸外国ではタミフル等の治療薬はあまり処方されていない。
・ タミフル等が普及した時期は2000年代であるが、そのはるか前からインフルエンザは5類感染症として、一般の診療所で診察していた。

無症状感染者の自宅待機は再考を

B. 感染者数の増加と社会経活動の両立対策
B1.感染者・濃厚接触者の社会経済活動の可能性を高める

現役世代の感染者の隔離期間および現役世代の濃厚接触者の隔離期間について短縮を検討するべきである。特に、無症状感染者について自宅待機で社会経済機能の低下が発生する可能性がある。マスク着用などの一定のルールのもとで、エッセンシャルワーカーの場合は感染者であっても無症状なら社会経済活動を実施できるように検討してはどうか。

B2. 感染者の全数把握や濃厚接触者の特定やモニタリングをやめる

オミクロン株は感染率が高く、世代時間が短いため、感染者の全数把握や濃厚接触者の特定やモニタリングの感染拡大防止効果は小さい。したがって、企業や家庭での自主隔離も過剰になっている可能性がある。保健所の濃厚接触者の関連業務をやめるだけで、高齢者対応など本当にリスクの高い対象者へのケアを充実させることができる。

このような方針には、「正確なデータがとれなくなり、感染状況の把握が遅れ、政策対応が後手に回る」との反対論があるが、データ収集については、地域ごとにいくつか指定された診療所などの一般の医療機関で、定点観測(サーベイランス)によって感染状況を把握するという方法に切り替えればよい。インフルエンザの流行状況をサーベイランスによって把握していることと同様に、コロナもサーベイランス方式に切り替えても重大な違いは生じないと考えられる。

大竹 文雄 大阪大学感染症総合教育研究拠点特任教授

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おおたけ ふみお / Fumio Otake

1961年京都府生まれ。1983年京都大学経済学部卒業、1985年大阪大学大学院経済学研究科博士前期課程修了。同年大阪大学経済学部助手、同社会経済研究所教授などを経て、2018年より大阪大学大学院経済学研究科教授。博士(経済学)。専門は労働経済学、行動経済学。2005年日経・経済図書文化賞、サントリー学芸賞、2006年エコノミスト賞(『日本の不平等』日本経済新聞社)、日本経済学会・石川賞、2008年日本学士院賞受賞。著書に『経済学的思考のセンス』『競争と公平感』『競争社会の歩き方』(いずれも中公新書)など。

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小林 慶一郎 慶応義塾大学経済学部教授

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こばやし けいいちろう / Keiichiro Kobayashi

東京大学大学院工学修士、シカゴ大学経済学博士。経済産業省、経済産業研究所、一橋大学経済研究所を経て、2013年から慶應義塾大学経済学部教授。経済産業研究所ファカルティーフェロー、キヤノングローバル戦略研究所研究主幹。

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