日暮里、駅前再開発の「先行モデル」が示す将来像 対照的な東口の再開発ビルと西口の「ネコの街」

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現在、常磐線の列車は特急以外、すべて停車するが、宇都宮線(東北本線)、高崎線の列車はホームがないため停車しない。かつては5〜8番線と番号が振られたホームが存在したのだが、上野まで2.2kmで近すぎるとの理由で、戦後は列車が停車しなくなった。

そして東北新幹線の建設に当たって、用地を捻出するため使われていないホームを撤去。線路も移設している。京成が0〜2番線、JRが3〜12番線と乗り場を案内しているが、5〜8番線が欠番のように見えるのはこのため。ただし、〇番線とはその名の通り線路に与えられた番号なので、存在しないわけではない。

日暮里駅に到着する日暮里・舎人ライナー(筆者撮影)

日暮里付近の鉄道地図は、2008年の日暮里・舎人ライナーの開業で、さらに複雑になった。東京都交通局が運営する新交通システムで、荒川、足立区内の鉄道空白地帯を埋める路線である。開業後、これが呼び水となって沿線の人口増加、ひいては日暮里・舎人ライナー自体の大幅な利用客増につながり、毎年のように増発が繰り返されるようになった。

コロナ禍前の2019年度の統計では、JR日暮里駅の乗車人員が約11万4000人、京成日暮里駅が約5万人に対し、日暮里・舎人ライナーも約2万7000人を数える。2008年度の段階ではJR駅の乗車人員は約9万人であったから、新線の開業がそのまま日暮里駅の乗換客増としてはね返った様子がうかがえる。

地下鉄のない“乗換駅”

一方、JRや京成の駅はホームがもともと狭く、ラッシュ時には乗降客があふれがちな傾向にあった。成田国際空港へ行き来する乗換客が、それに拍車をかけていた。そのため京成は、2010年の成田スカイアクセス開業に合わせてホームを複層化。下り列車の乗り場を3階に上げた。JRも改良工事を実施し、常磐線ホームの拡張や乗換通路の拡幅、エスカレーターの増設などを行って対応している。

下御隠殿橋のトレインミュージアム(筆者撮影)
下御隠殿橋から見た山手線の電車(筆者撮影)

日暮里は品川と並び、東京メトロ、都営地下鉄が乗り入れていないにもかかわらず、重要な乗換駅となっているところが珍しいと言えば珍しい。現在は改良工事も一段落。「エキナカ」もオープンし、にぎわっている。

“鉄道の町”である象徴が、駅北側に架かる下御隠殿橋(しもごいんでんばし)だ。山手線、京浜東北線、東北新幹線、宇都宮・高崎線、常磐線の線路が下をくぐり、京成の線路もすぐ側を通っていることから、荒川区の手で、トレインミュージアムと名付けられたバルコニー(電車ウォッチングポイント)が設けられており、親子連れが目立つ。未来の鉄道好きが育つ町でもあるのだ。

土屋 武之 鉄道ジャーナリスト

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つちや たけゆき / Takeyuki Tsuchiya

1965年生まれ。『鉄道ジャーナル』のルポを毎号担当。震災被害を受けた鉄道の取材も精力的に行う。著書に『鉄道の未来予想図』『きっぷのルール ハンドブック』など。

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