日暮里、駅前再開発の「先行モデル」が示す将来像 対照的な東口の再開発ビルと西口の「ネコの街」

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江戸時代は行楽地だったが、太平洋戦争後は商業地として栄えた。

東口側に連なる日暮里繊維街(筆者撮影)

駄菓子と並ぶ名物商店街が、日暮里繊維街だ。そちらは今も90店舗あまりが日暮里中央通り沿いで盛業中。日暮里といえば繊維の町、飾らないファッションの町とのイメージは明確にある。有名どころではデニムメーカーの「エドウイン」が最近まで本社を置いており、最大の旗艦店がステーションガーデンタワーにある。

西口の人気散策エリア、谷中ぎんざの入り口(筆者撮影)

人気の散策エリア「谷根千」の、JRの最寄り駅も日暮里。東京メトロ千代田線と訪問者の利用を分け合っている。北改札口を出て西へ数分歩くと、いささか急な階段の下に「ひぐらしの里・谷中ぎんざ」との門が見えてくる。コロナ禍で途絶えていた休日の混雑も、かなり戻ってきた印象だ。

歩く楽しみがある町

山手線は上野、鶯谷と“上野の山”の崖下を通ってくるが、日暮里駅の立地も同じ。東口側は平坦な土地が広がるが、西口側は高い台地だ。

2020年に完成したJR日暮里駅西口駅舎(筆者撮影)

橋上駅舎の改札口を出て、東口の駅前広場へは階段やエスカレーターを降りる。西口側は、改札口の高さそのままで町へと出られる。谷根千は尾根筋を越えた向こう側の谷間になる。西口は2020年に完成したばかりの新しい駅舎。落ち着いた雰囲気が好ましいが、今回、駅名表示の文字にネコの耳やしっぽ、肉球もあしらわれているのに気がついた。谷根千が「ネコの街」と呼ばれていることにちなむそうだ。

こうした地形ゆえサンマークシティ日暮里は、3階部分が駅と歩行者デッキでつながっている。地平部分の広場も気持ちよいものだが、こうした回廊を活かす町の展開もあってよいのではとも思う。日暮里駅周辺で歩く楽しさがもっとも欠けているのが再開発エリアではあるまいか。水平に広がっていた町が垂直に立ち上げ直されると、上層階のマンションの居住者やオフィスに通う人はともかく、なかなか地平から上へと行きづらい。一見の客は、とくにそうだろう。

東口駅前の再開発ビル「サンマークシティ」(筆者撮影)

駄菓子屋のように、もともと日暮里で商売をしていて、再開発による立ち退きでビル内へ移転した店が多いと見受けられるので、超高層ビルであっても、歩く楽しさがあっていい。駅東口側には、中華やエスニック料理など安価で面白そうな飲食店も集まっているので、ぶらぶら歩きをするなら、ついそちらへと足が向いてしまう。

JR東日本と京成電鉄、日暮里・舎人ライナーの乗換駅でもある日暮里駅は、1905年に開業した。田端を起点として水戸方面へと線路を延ばしていた常磐線の列車が、上野駅へと直通できるよう、三河島との間を結ぶ短絡線が建設された際に設けられた駅だ。そのため日暮里―三河島間の常磐線は、不自然なぐらいに急カーブを描いている。1931年には京成電気軌道(現在の京成電鉄)が乗り入れ、山手線などへの乗換駅となった。

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