苦闘するアベノミクス「3つの変身」で見えた課題 議論百出の経済政策を今改めて検証する

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3つ目の変身は中央銀行で起きた。アベノミクスの副次的効果として日銀が「全能の神」になってしまったのだ。

保有する国債が531兆円(2021年度末)に達するというバランスシートの肥大化だけではない。かつては自身が「絶対できない」と主張していた長期金利のコントロールに乗り出したことは特筆するべきだろう。

国家財政に直結する長期金利の決定権を中央銀行が手にしたことは大きい。また、財務省の介入権限がアメリカによって封じられている現在、為替市場も金融政策を見て動いている。

安倍政権に関する地道な吟味・検証

安倍氏は生前「日銀は政府の子会社」と言い放ったが、これだけ権能拡大を果たした組織の独立性とチェック・アンド・バランスをどう考えるのかという問題は、今後大きなテーマとして立ち現れてくるだろう。

アベノミクスはさまざまな立場から議論百出の政策だったが、残念ながら、中曽根康弘元首相の言っていた「歴史法廷」に安倍氏が自ら立つ機会は失われた。その代わりを努めねばならないのはジャーナリズムだろう。安倍政権に関して地道な吟味・検証を積み重ねていく以外にないと思っているのだがいかがだろうか。

この記事は『週刊東洋経済』の連載「フォーカス政治」の執筆陣によるシリーズ1本目です。​以下の記事も配信しています。
独自取材メモで振り返る安倍氏の肉声と“DNA"
(歳川 隆雄 : 『インサイドライン』編集長 )
日本政治にとって「大転換点」となった参議院選挙
(山口 二郎 : 法政大学教授 )
軽部 謙介 帝京大学教授・ジャーナリスト

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かるべ・けんすけ

1955年生まれ。早稲田大学卒業。時事通信社でワシントン支局長、ニューヨーク総局長、解説委員長を歴任。2020年4月より現職。著書に『アフター・アベノミクス』(岩波新書)など。

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