苦闘するアベノミクス「3つの変身」で見えた課題 議論百出の経済政策を今改めて検証する
「デフレは貨幣現象なので日銀が大規模緩和すれば2年くらいでインフレ目標は達成できる」
こんな掛け声で始まったアベノミクスは、途中からトップが金融政策に関心を失ったように見えたが、そのあたりの事情をのちに安倍氏は自民党の会合でこう説明している。
「安倍政権では比較的金融政策を大切にしてきたが、中盤くらいから財政政策が必要だと思うようになった」
首相を退陣してからはこの変身が一層鮮明になっていった。関係者によると、自民党内で財政問題を議論するために2021年12月に立ち上げた財政政策検討本部の議論で、「財政再建目標は政権運営の邪魔になるし、政策決定者の意思決定を歪める可能性がある」と断言。みずから先頭に立って積極財政の必要性を説いていた。
富が全体に行き渡らず「分配」重視へ
2つ目の変身は、政策の重心を「分配」にシフトしたことだ。アベノミクスが生まれた2012年の総選挙で安倍氏はこう訴えた。
「縮小均衡の分配政策」から「成長による富の拡大」への転換を図ります――。
周辺にいた経済産業省の官僚たちによる振り付けの色彩が濃かったが、政権発足後丸3年が過ぎるあたりから、「富が生まれても日本全体に行き渡っていないことが鮮明になってきた」(政府当局者)。
これでは政治的に「まずい状況」に追い込まれる可能性がある。安倍氏も周辺に「循環がうまくいっていない」と漏らした。「1億総活躍」などという標語を掲げながら最低賃金アップに積極的な姿勢を示すなど、分配への目配りを強調し始めたのはこのころからだ。
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