ふるさと納税の「謝礼品」はどれだけお得か 4月からは「確定申告」が不要に

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「北海道には行ったことがないんです。それでもホームページを見て、自然がいっぱいでいい町だなと思い寄付を決めました」(東京都墨田区に住む40代主婦)。

2月2日、東京・品川プリンスホテル。北海道の上士幌町にふるさと納税を行った約1000人が集まった。同町が納税者と直接交流する場として開いた「ふるさと納税大感謝祭」だ。

自治体と納税者との直接の交流の場は「全国でもおそらく初」(上士幌町)。会場にはお礼の品として贈っている十勝和牛のステーキやミルクジャム、ジェラートの試食コーナーを設置。そのほか特産品の販売や、町の紹介コーナー、移住体験などの相談会も開かれていた。

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北海道中央部に位置する同町は、人口約4900人、「人間より牛が多い」酪農の町だ。そんな町が注目を集めたのは、ふるさと納税がきっかけだった。寄付額の約半分に相当する特産品を贈る還元率の高さ、クレジットカード決済など寄付の際の利便性も人気の秘訣だ。

上士幌町には2014年度に4万7000万件、金額で約8億4000万円のふるさと納税が集まった(1月19日時点)。竹中貢・上士幌町町長は、人口のおよそ10倍に膨れ上がった納税者を「応援人口」と表現する。「おそらく納税者数は全国で最も多い。特産品だけでなく、こうしたフェイス・トゥ・フェイスの会を開くなど、納税者との関係作りも評価された」(竹中町長)。

竹中町長は「ふるさと納税による地元の経済効果は大きい」と言う。確かに納税額の半分はお礼の品を用意しなければならず、配送料など必要経費を考えると、町の税収としては納税額の35%程度しか残らない。それでも2014年度の町税が6.4億円の同町にとって財政的なメリットは大きい。さらにお礼の品はすべて地元の農産物であり、物流や印刷も地元業者を使う。その点で、地元にお金が「落ちる」仕組みになっている。

「納税者の9割はふるさと納税ではじめて上士幌町を知った方々。この縁を大事にして、もっと関係性を深めていきたい」(同)。今後は納税者の多い関西や中部でも同じような交流会を予定する。そして実際に町に足を運んでもらうことで旅行者の増、ゆくゆくは移住促進につなげたい考えだ。さきほどの東京・墨田区の主婦も、「近いうちに北海道に旅行に行こうと家族4人で話し合っている」と笑顔で話す。

4月以降の寄付は確定申告が原則不要に

ふるさと納税には「受益者負担に反する」「お礼の品の引き上げ競争になっている」といった批判もある。ただ人口減が続き、経済の低迷が続く地方自治体にとって、みずからをアピールするきっかけとなるのは事実だろう。制度を生かすも殺すも、各自治体の創意工夫にかかっている。

2015年4月1日以降は5つの自治体までの寄付なら確定申告が不要で、より簡単な手続きでふるさと納税の恩恵が得られるようになる見込み。さらに2015年1月以降の寄付からは、控除限度額が個人住民税所得割額(前年の所得金額に応じた課税額)の2割までと、従来の2倍に引き上げられた。

制度の拡大を受け、ふるさと納税を新たに考えるビジネスパーソンは増えるだろう。ブームはまだまだ続きそうだ。

並木 厚憲 東洋経済 記者

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なみき あつのり / Atsunori Namiki

これまでに小売り・サービス、自動車、銀行などの業界を担当。テーマとして地方問題やインフラ老朽化問題に関心がある。『週刊東洋経済』編集部を経て、2016年10月よりニュース編集部編集長。

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