日本と欧州では道路環境はもとより、1運行当たりの走行距離が異なる。最高速度こそ80~100km/hの間と、日本の80km/h(90km/hでの速度リミッター)とほぼ同じだが、日本では1運行当たりの走行距離が350km程度(出典:国土交通省)であるのに対して、欧州ではその2倍以上に延びる。
よって、欧州の長距離輸送ドライバーは長時間にわたる労働が常態化しており、今回試乗したFHのような快適なキャビンをもち、実用的な運転支援技術を備えた大型トラックに人気が集中するのだ。
ちなみに試乗したFHは、前走車との車間を維持するアダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)を装備するが、車線の中央を維持するレーン・キープ・システム(LKS)は装備しない。よって、自動化レベルを示す世界基準であるSAE(自動車技術者協会/Society of Automotive Engineers)のレベリングではレベル2ではなくレベル1にとどまる。
中央走行を維持する機能をあえて持たせていない訳
ボルボ・ダイナミック・ステアリングでは、光学式カメラセンサーで車線を読み取っているものの、システムが主体となって中央走行を維持する機能はあえて持たせていない。
ステアリングはドライバーが主体となって操作しつつ、システムがその意思を理解してドライバーの疲労のもととなる外乱に対する当て舵制御を自動で行う。つまりシステムは外乱というノイズのみ取り去ったわけだ。こうした人と機械の協調運転こそ、ボルボ・ダイナミック・ステアリングが目指した世界観である。
日本では三菱ふそうの大型トラック「スーパーグレート」がACCに加えて「アクティブ・ドライブ・アシスト」としてLKSを装備しレベル2を達成。いすゞ自動車の大型トラック「ギガ」もACCである「全車速ミリ波車間クルーズ」とLKSを組み合わせレベル2を達成している。
働く車の代名詞である大型トラックは国と地域によって求められる特性が異なる。それを踏まえたうえで、商用車メーカーは各国で共通するドライバーの疲労軽減という観点に立って先進安全技術や運転支援技術を導入し、安全な物流環境の継続を目指している。
なお、筆者運転によるFHの試乗動画をYouTubeチャンネル『西村直人の「乗り物見聞録」』にアップした。助手席にはボルボトラックのアフターマーケット部門担当の川﨑久史さんに同乗いただき、ボルボ・ダイナミック・ステアリングの生まれた背景など解説いただいている。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら