ANAとJAL、燃油サーチャージ「空前の高値」の苦悩 円安と原料高で2005年に導入して以来の最高値

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空前の高値圏は少なくとも2022年内は続きそうだ。ANAとJALのサーチャージ基準(国際線・燃油特別付加運賃)に基づき、7月6日現在のシンガポールケロシンと円相場から燃油サーチャージ価格を東洋経済が試算すると、10月~11月のハワイ行き(日本発)については8月~9月の水準から約2000円アップの33200円(ANA)、32800円(JAL)となる。

円安の要因となっている日米の金利差は当分続くことが予想される。原油についてはウクライナ侵攻によるロシアの減産を埋めるために石油輸出国機構(OPEC)が少しずつ増産をしており、価格は次第に落ち着いて行くだろう。こうした外部環境を加味すれば、燃油サーチャージは2022年の10月~11月をピークに下がる可能性はあるものの、高値圏での推移となりそうだ。

航空便利用客の負担は、燃油サーチャージだけではない。現在、日本政府は水際対策を取っている。ハワイの場合は帰国の際、出国72時間前の新型コロナウイルスの検査と陰性証明書の提出を義務付けている。特定の医療機関で検査をし、陰性証明書を発行してもらう必要があるが、その料金は1回で2万円ほどだ。

海外旅行需要は戻り歩調

莫大なコストに加えて、手間もかかる現在の海外旅行。だが、意外にも「8月の予約状況は期待値並みで来ている」と、JALのレベニューマネジメント推進部の増村浩二部長は話す。同社の場合、4月~6月の国際線の旅客数はコロナ前の2019年比で25%と低迷していたが、7月~9月については45%まで回復すると見込んでいる。足元の旅客数はこの想定線で推移しているようだ。

ANAの超大型機A380はカメを模した特製のペイントを施す(記者撮影)

ANAは7月1日にハワイ-成田間の超大型機A380、通称「フライングホヌ」の運航を2年4カ月ぶりに再開した。同機はANAの中でも最大の機体(2階建て)で、席数520席を数える。同日の便はファーストクラスとビジネスクラスが満席、全体では409席が埋まり、搭乗率は78%だった。

【2022年7月9日11時55分追記】初出時の運航再開日を上記のように修正いたします。

ハワイ路線について、「5月のゴールデンウィーク以降の予約状況は、好調を維持している。(燃油サーチャージや円安はあるが)ハワイに行きたいという顧客の思いが勝っている」と、ANAの井上慎一社長は7月1日に行われたA380運航再開の会見で力強く語った。

ANA社長に就任する前は、グループ会社のLCCピーチの社長を務めていた井上慎一氏(記者撮影)

逆風下でも、海外旅行需要が積み上がっている理由について、ANAとJALの見解は一致している。足元では、コロナ禍で海外旅行が制限されていた反動によりリベンジ消費が沸き起こり、「PCR検査の手間や燃油サーチャージの追加料金などを支払ってでも海外へ行きたいという意欲の高い日本人観光客が多い」と、両社ともに見ている。

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