ANAとJAL、燃油サーチャージ「空前の高値」の苦悩 円安と原料高で2005年に導入して以来の最高値
一方で、最盛期である8月やそれ以降の見方は、ANAとJALで若干異なっている。ANAは、「(燃油サーチャージの高騰は需要に)大きな影響があると思っていない」(レベニューマネジメント部の内藤哲也氏)と楽観的。これに対して、JALは「(今後の需要動向については)危惧している」(増村部長)としている。
JALが懸念するように、今後日本人の海外旅行需要が減少する要因としては次の2つが考えられる。
1つ目はチケット価格が高騰したことで、繰り返し旅行へ行く需要が減ることだ。「今は久しぶりに海外へ行こうという意欲のある人が多いが、(価格がこれだけ高騰すると)2回目、3回目と繰り返して海外旅行をするかどうかはわからない」(JALの増村部長)。
2つ目は、海外より安価な国内旅行にシフトする動きが出てくることだ。観光庁は、感染状況の改善が確認できた場合、7月前半をメドに全国を対象とした旅行支援事業を始めると発表している。価格が高騰している国際線とは対照的に、国内線の航空券付き旅行商品は割引補助を受けることができそうだ。
円安の影響もあり、海外旅行のコストがかさむとなると、海外旅行を断念して国内を選択する観光客が今後増える可能性は十分にある。
カギは外国人観光客の獲得
航空会社にとって燃油サーチャージは、8割程度の搭乗率があれば燃油料金のコスト増加分を相殺できる制度である。逆に搭乗率が低ければ、得られる燃油サーチャージの収入も少なく、燃油高騰分を賄うことはできない。
国内旅行客の海外渡航の先行きを不安視するJALだけでなく、先行きを楽観視するANAも、今後の戦略として外国人旅客の獲得に一層力を注ぐことが考えられる。現在、両社は国際線から国際線へ乗り継ぐ「三国間流動」の集客に成功している。
例えば、ANAは乗り継ぎが多い成田空港の北米・アジア路線の足元の搭乗率がコロナ前と同じ8割にまで回復しているという。JALも同様に5月はアメリカ大陸、東南アジア路線などの利用率が7割程度だったが、コロナ前に比べて三国間流動の需要が増加している。日本の地理的条件に加え、香港キャセイパシフィック航空やアメリカデルタ航空などが路線供給を戻せていないことが追い風となっている。
ANAはさらなる需要獲得のために、北米・アジア路線の増便を検討している。JALも乗り継ぎがしやすいダイヤ編成を構築していく構えだ。
燃油サーチャージ価格はいつ、どこまで上昇するのか。その先行きと同時に、インバウンド需要が戻ってきたときに外国人観光客をどこまで囲い込めるかも、航空各社の行方を占うカギとなりそうだ。
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