「平和的に台湾を飲み込む」中国の戦略が怖い訳 嫌がらせを重ねた先の「戦意喪失」が真の狙いだ

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いずれ国民党が政権を取り、中国との関係を深めることで“平和的に台湾を飲み込む” というのが、中国の戦略ではないでしょうか。

「台湾有事は日本有事でもある」という状況

世界がロシアによるウクライナ侵攻に気を取られている2022年5月、中国は日本近海で空母からの艦載機の発着訓練を繰り返していました。ヨーロッパではロシアが脅威ですが、アジアでは中国が脅威なのです。

同じ5月、アメリカのジョー・バイデン大統領が訪日し、中国包囲網である「クアッド」(アメリカ・日本・オーストラリア・インド)の首脳会議に臨みました。ウクライナ対応で忙しいはずのアメリカ大統領が、寸暇を惜しんでも対中国の体制作りに尽力していることがわかります。

その中国は、まもなく空母が3隻に増えます。これだけあれば、つねに東シナ海や南シナ海に中国海軍がにらみをきかせることができるようになります。

先に述べたように、中国の「国産空母」というものは、ウクライナからの購入に始まっています。中国は、ウクライナから空母の建造技術がある技術者多数を高給で呼び、空母を完成させましたが、この過程で空母の建造方法を学んだ中国の技術者たちが、2隻目、3隻目を建造しているのです。

つまり中国にとってウクライナは、軍事的に大事な国。そこを同盟関係にあるロシアが攻撃したことで、中国政府は板挟みとなっているのです。

空母は、いわば「移動できる飛行場」です。戦闘機や爆撃機を多数搭載して、どこにでも行くことができます。今後は、台湾を包囲する形で台湾に圧力をかけることになるでしょう。もし台湾が独立を宣言した場合、中国は軍事力を行使してでも独立を阻止するでしょう。

しかし、台湾に武力行使することがあれば、アメリカは国内法の「台湾関係法」にもとづいて、台湾の支援に乗り出します。これが軍事支援ということになれば、アメリカ軍は沖縄の基地から発進します。

中国は、アメリカ軍の行動を実力で阻止しようとするでしょうから、東シナ海で軍事衝突が発生します。そのとき、日本の自衛隊は、どのような行動を取ることになるのでしょうか。

あるいは、中国は沖縄のアメリカ軍基地へのミサイル攻撃をするかもしれません。それはすなわち、日本領土への武力攻撃を意味します。自衛隊は、反撃することになるでしょう。それは、中国から見たら、日米が共同して中国を攻撃しているように見えます。さて、中国はどのような対応を取ることになるのか。「台湾有事は日本有事でもある」とは、こういう状況を示すのです。

次ページいま中国はウクライナ侵攻を、固唾をのんで見守っている
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