「平和的に台湾を飲み込む」中国の戦略が怖い訳 嫌がらせを重ねた先の「戦意喪失」が真の狙いだ

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ソ連が崩壊し、ロシアは未完成の艦艇など必要なくなったので、クリミア半島を持つウクライナがそのまま保有していたところ、マカオの会社が「海上カジノとして使いたい」と購入を申し出たのです。

ウクライナが空母としての装備をすべて取り外して売却すると、船体はマカオに入らずそのまま中国の海軍基地へ。購入した会社はペーパーカンパニーでした。中国政府のダミー企業が、ウソをついて購入したのです。

その後、中国は失業したウクライナ人技術者を大量に高給で雇い、2011年、中国海軍初の空母として完成させました。これがいま、東シナ海を航行しています。

さらに、豚肉を大量に消費する中国では、飼料になるトウモロコシの8割をウクライナから輸入しているといわれます。

中国としてはウクライナとの関係上、ロシア寄りの姿勢をとることもできず、どうふるまうべきか苦慮しているのではないでしょうか。

台湾への軍事侵攻で与那国島も巻き込まれる?

一方、今回のロシアのウクライナ侵攻で、中国が台湾に軍事侵攻するのではないかという懸念も強まりました。

習近平国家主席にとって「台湾統一」は悲願です。2021年10月9日、習近平は辛亥革命から110年を記念する式典で演説し、「必ず実現できる」と述べました。

中国は、2035年までに北京と台湾をつなぐ高速鉄道や高速道路を整備する計画を進めています。

すでに「2035年に(高速鉄道に乗って)台湾に行こう」という歌がヒットし、若者が曲に合わせて踊っているような状況です。

「今日のウクライナは明日の台湾」「台湾有事は日本有事」などといわれていますが、もし中国が台湾に侵攻などしたら、台湾から約110kmしか離れていない与那国島が戦域に入る可能性があります。

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