千葉雅也「なぜあなたは哲学を学ぶべきなのか」 現代社会を生きるビジネスパーソンが知る意義

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──ローカルかグローバルかで言うと、外来のものに嫌悪感を示す人たちがいるなと、最近実感することがあります。身近な例えですが、街で長く愛される老舗の純喫茶と、外国からやってきたチェーンのカフェを比べて、後者をチャラいものと見下すような。

千葉:中間がリアルだってことですよ。つまり老舗の渋い喫茶店を好きな人はそれでいいし、外来の華やかなカフェを楽しむのもいい。それはどっちがベストとも言えないということですよね、きっと。

──どっちもそれぞれによさがあるよ、というふうに思うということですか?

千葉:そうですね。だってそうじゃなかったらファシズムでしょ。

──でも今は、どちらかに決めたほうがいいという社会的な力がすごく強まっている気がします。

千葉:そう思いますよ。いろいろなところで、問題を起こしたくない、少しのミスも起きてはいけない、だから何が正しいかをはっきり決めてしまおうという圧力が強くなってきている。昔だったらもう少し緩やかだったけれど、今は再発防止策などをとっていくうちに、どんどん窮屈になっていってると思うんです。『LEON』などは、そういう風潮に反旗を翻している雑誌だと思いますけど。

(写真:KAOLI)

中間を見ることで高解像度で捉えられるようになる

──私は千葉さんと同い年で、90年代に青春時代を過ごした世代なのですが、当時はまさにグレーというか、今よりも「いい」「悪い」の線引きがくっきりしていなかった気がします。

千葉:そうですね。というか僕はそれが普通であって、いろいろと窮屈になっていったことをおかしいと単純に思っています。今、この状況を当たり前と思っていること自体、かなり価値観が歪んでいると思うのです。

例えば日本では、やたら屋外でタバコ吸うなという規制が強くなってきたけれど、あれも変な話で、アメリカなんか、むしろ外で吸えるわけですよ。僕が2017年にハーバード大学に研究員として行ったときは、みんなキャンパスのまわりでタバコを吸っていましたから。一部の人が、アメリカのエリートはタバコを吸わないみたいなことを言っているけれど、全然そんなことない。要は物事を具体的に見なきゃいけないってこと。アメリカはこうだから日本もこうなるべきだとか、そんな大ざっぱな話ではないのです。

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