日本人は「音楽大学」凋落の深刻さをわかってない 弱まる経済を補完する文化基盤の構築をどうする
また、シンガポールでは2000年以降、経済発展に必要とされる創造力を文化・芸術教育に求めるルネッサンス・シティ・プランが展開され、2008年には芸術を通じて英語、数学、国語、理科、社会などの科目を学ぶ方法を採用したスクール・オブ・ジ・アーツ・シンガポールという学校が設立されました。
現在は2025年までの長期計画「アート・アンド・カルチャー・ストラテジック・レビュー(ACSR)」の期間中で、引き続き文化芸術政策が経済成長の中核を担うとの立場を取っています。具体的には、2025年までに国民のアート鑑賞を40%から80%に、アート活動を20%から50%まで引き上げるなどが目標として掲げられています。
日本では音楽の授業時間が大幅減
これとは対照的に、日本では、学習指導要領改訂の都度音楽の授業時間数は減り、1968年には452時間あった小学校6年間での音楽授業時間数が、1992年⇒418時間、2002年⇒358時間と約30年で100時間近く減りました。
2011年、2020年の改定では、「ゆとり教育」からの方針転換で、授業の総時間数が、それぞれ02年の945時間から980時間、さらに1015時間へと増えたのですが、音楽はどの学年も1時間たりとも増えていません。
中学校の音楽授業も傾向としてはほぼ同じですが、特に2、3年生の時間数は激減し、年間35時間と、週1時間もないありさまです。
「音大崩壊」現象の兆候に加え、このような音楽教育(美術もほぼ同様です)に対する姿勢では、弱まる経済基盤を補完する文化基盤の構築など、とうてい不可能でしょう。
経済力の国際的地位低下が不可避な情勢の中、現在の高い国際的地位を保つために、今日本がなすべきことは何か――「音大崩壊」現象は、単に音楽教育問題にとどまらず、日本の国のあり方そのものを、厳しく問いかけているのではないでしょうか。
第1回:音楽大学がここまで凋落してしまった致命的弱点(6月22日配信)
第2回:スポーツ庁はあるのに、そういや音楽庁がない訳(6月29日配信)
第3回:音楽大学の凋落が誰でもパッとわかる納得の理屈(7月6日配信)
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