マツダがレースで使った「ミドリムシ」の正体 ユーグレナが作る次世代バイオディーゼル燃料

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そうした中、日本では石油大手が2021年から2022年にかけて相次いで、SAFへの対応などで次世代バイオ燃料の事業化に関する発表を行っている。ベンチャー企業であるユーグレナなどを含めて、日本でもやっと次世代バイオ燃料市場の拡大に向けた風が吹き始めた印象だ。

富士24時間レースのイベント内では次世代バイオディーゼル燃料車の試乗会も行われていた(筆者撮影)

次世代バイオディーゼル燃料については、さまざまな原料や製造方法があるが、原料となる廃油の獲得競争がすでに始まっているという。そのため、ユーグレナは油脂分を含むミドリムシを自社で培養することが、石油大手など他社との大きな差別化要因になると考えている。

究極は、100%ミドリムシ由来の次世代バイオ燃料を製造・供給することだと思うが、まずは現在の実証プラントで行っているような、既存ディーゼル燃料とサステオとの混合燃料が現実的だ。混合燃料の量産効果によって、コストを抑制する方向で事業を進めることになる。

身近になりつつあるバイオ燃料

最後にサステオの採用事例を紹介しよう。ジェット燃料では、2021年6月4日に国土交通省所有の飛行検査機でのフライト、同年6月29日にプライベートジェット「ホンダ ジェットエリート」、そして2022年3月16日には富士ドリームエアラインでのチャーターフライトなどで使用されている。

次世代バイオディーゼル燃料としては、2020年3月のいすゞ社員用バスを皮切りに、JRバス関東、ファミリーマートの配送トラック、セブンイレブンのペットボトル回収車、商船三井のタグボート等で採用された。

実証プラントでの供給量の関係などから、これら次世代バイオディーゼル燃料は通常のディーゼル燃料にサステオを10%混合した状態で供給している。現在、サステオの次世代バイオディーゼル燃料100%で走行しているのは、マツダがスーパー耐久シリーズで参戦するMAZDA2 Bio conceptだけだ。

ミドリムシ由来の次世代バイオディーゼル燃料は、将来性のある燃料の1つであるといえる。いつの間にか、こうした次世代バイオディーゼル燃料が身近になっている。そんな日も、そう遠くないかもしれない。

桃田 健史 ジャーナリスト

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ももた けんじ / Kenji Momota

桐蔭学園中学校・高等学校、東海大学工学部動力機械工学科卒業。
専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。海外モーターショーなどテレビ解説。近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラファイムシフト、EV等の車両電動化、そして情報通信のテレマティクス。

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