マツダがレースで使った「ミドリムシ」の正体 ユーグレナが作る次世代バイオディーゼル燃料

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ジェット燃料については、国際認証機関であるASTM(アメリカン・ソサエティ・フォー・テスティング・アンド・マテリアル)インターナショナルが規定するD7566規格のANNEX6という製造方法で行う。

世界的に見て、ANNEX6は大学などの研究室レベルでの実験はほかにも例があるが、原料から「ASTM D7566 Annex6」の規格を満たすJETを一気通貫で製造できるのは、現時点では鶴見の実証プラントのみだという。

製造プロセスは4段階

具体的な製造内容については、実証製造部 プロセス管理課長 兼 実証プラント副工場長の草次宏昌(くさつぐひろまさ)氏から、使用する材料や精製される実物のサンプルを見ながら詳しい説明を受けた。

バイオ燃料製造実証プラントにて草次宏昌氏(筆者撮影)

原料は大きく2つある。1つは、ユーグレナが沖縄県石垣島で生産している、微細藻類のミドリムシ由来の油脂(ミドリムシワックス)だ。ミドリムシは100種類以上あり、ビタミンやカルシウムを含むものなどさまざまな特徴を持つものがあるが、今回の実証では油脂を含むミドリムシを使う。

もう1つは、家庭や店舗などから出た天ぷら油などの廃食用油だ。この中には、未使用で賞味期限切れした油なども一部含まれる。

バイオ燃料の原料であるミドリムシワックスと廃食用油のサンプル(筆者撮影)

精製工程は4段階だ。第1段階は「原料前処理」で、油脂を加水分解し、リンや金属分といった不純物を除去する。固形廃棄物の排出はなく、製品収率のロスは0.5%未満だという。

第2段階は「水熱処理」。加水分解した油脂を、シクロパラフィンや芳香族化合物を含む低分子量の燃料に適した合成油へと変換する。

第3段階は「水素化」で、酸素原子・2重結合を除去して、純粋な液体炭化水素製品へ転換する工程。

第4段階は「蒸留」で、水素化された製品を、沸点に基づきナフサ、ASTM D7566 Annex6に適合したジェット燃料、JIS K2204に適合した軽油成分へ精製する工程(非化学変換工程)だ。

4つの工程、それぞれで精製されるサンプル品を見たが、第1段階では茶色っぽい液体が、第2段階を経ると一気に黒い液体となり、第3段階では黄色がかった透明度がある液体となった。最終的に蒸留されたナフサ、ジェット燃料、バイオディーゼル燃料は、透明な液体だ。

原料から製品まで4つの段階を経て変化する様子がサンプルを見るとよくわかる(筆者撮影)

草次氏は「実際の実験運転は2019年1月に始めたが、蒸留までのプロセスが行えたのは、8回目の実験運転となった2020年5月が最初。さらに、ジェット燃料を含むすべての燃料まで蒸留できたのは、初回運転から2年後、13回目の実験運転となった2021年1月だった」と、これまでの苦悩を振り返った。現在は、安定した精製が可能になっているという。

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