日本人は「生物多様性」のど真ん中に生きている 茶道の文化から「命のつながり」が見えてくる

拡大
縮小
豊かな生物多様性に根付く文化、茶道にもさまざまな影響が感じられます(写真:hirorin/PIXTA)
この記事の画像を見る(11枚)

茶道は、「茶を飲む」という日常の行為を「道」に高めた日本文化です。お茶を点てるという行為は、禅や瞑想につながるものとして、慌ただしい日常の中、孤独な決断を迫られる企業経営層にもファンが多くいます。

茶道は、季節感を何より大切にしますが、それは高温多湿のアジアモンスーンがはぐくむ生物多様性の宝庫と実は深く関係しています。今回の記事ではその関係をひもといていきたいと思います。

小西雅子 茶箱「雪」のお点前 東京杉並区の茶室「星岡」にて(c)WWF Japan

季節感をこよなく愛する茶道

茶道は、ひとことで言うと、和やかで清らかな心を込めて、客人にお茶を点てていくことです。お茶を点てる人を「亭主」と言いますが、亭主がお茶事を開催するときには、季節やテーマを考え抜いて、茶道具や花、掛け軸などを整えていきます。いわば「季節感」というストーリーを味わいながらお茶を楽しむ時間を作り出します。

茶道の空間やお道具には、簡素なわび・さびの中に、無限の自然が再現されていますが、その原点は日本の高温多湿な四季で息づく多様な植物や生物です。私たちが当たり前と思っている日常は、豊かな生物多様性に支えられているのです。

私は気候変動やエネルギーを専門とする政策提言に従事する仕事をしていますが、実は幼いころから茶道家の母に師事して、裏千家茶道や小原流華道の家元教授という別の顔を持っています。

海外を飛び回る生活ですが、日本の季節の移り変わり、梅雨の走りに雨に打たれる小さな草花や、初秋に冴え冴えとした白い月などを見ると、魂が震えます。そのお茶の中には、季節感、ひいては日本独自の生物多様性がいかに息づいているか、改めて見ていきたいと思います。

次ページ四季折々の自然の風景や移ろいを表現
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT